難民16万人の受け入れ計画、東欧諸国は猛反発
欧州委員会のユンケル委員長は9日、欧州議会で演説し、シリアなどからの難民16万人をEU加盟国が分担して受け入れる案を発表した。各国の経済規模や人口に応じて割当人数を決め、受け入れを義務付けるという内容。14日の臨時内相会議で同案について協議するが、ハンガリーをはじめとする東欧諸国は受け入れの義務化に強く反発しており、合意が得られるかは不透明だ。
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中東やアフリカから大量の移民や難民が欧州に押し寄せている事態を受け、欧州委は5月、地中海を渡ってイタリアとギリシャに到着した難民を対象に、向こう2年間に4万人を加盟国が分担して受け入れることを義務付ける案を打ち出した。しかし、東欧諸国などの反対で合意できず、6月の首脳会議で自主的な取り組みとして加盟国が分担して受け入れることで合意した。その後、トルコからギリシャ経由で陸路ハンガリーに入る移民や難民が急増したことを受け、欧州委は新たにハンガリーに到着した難民も対象に、受け入れ枠を12万人増やし、当初の4倍にあたる計16万人に引き上げる案をまとめた。
受け入れの対象はシリア、イラク、エリトリアからの難民で、追加分12万人の割り当てはドイツが3万1,400人、フランスが2万4,000人、スペインが1万5,000人などとなっている。受け入れの義務化に反対している加盟国も割り当ての対象に含まれており、ポーランドは9,300人、チェコは3,000人、スロバキアも1,500人の分担を求められている。なお、英国、アイルランド、デンマークの3カ国はEUの難民政策への参加が免除されているため、分担は義務付けられていない。ただ、英国はEUの枠組みとは別に、シリアからの難民2万人を受け入れる方針を打ち出した。
ユンケル委員長は演説で、現在EUが取り組むべき最大の課題は難民問題だと強調。難民の受け入れをめぐって加盟国が対立している事態を念頭に、「危機を前に恐れるのではなく、EUが結束して断固とした行動をとるべきときが来た」と述べた。
欧州委の提案によると、受け入れ国には収容施設の整備費などに充てるため、EU予算から難民1人につき6,000ユーロが支払われる。また、ギリシャ、イタリア、ハンガリーの3カ国には自国に到着した難民の移送費用として、1人につき500ユーロが支給される。
このほか今回の提案には、アフリカから流入する難民の増加に歯止めをかけるため、18億ユーロの緊急信託基金を創設し、政情安定化や雇用創出などの取り組みを支援する計画が盛り込まれている。
さらに難民の受け入れを積極的に進める一方、経済的な理由から欧州に押し寄せる移民については本国への送還を迅速化するため、ユンケル委員長は帰還しても「安全が保障される国」のリストを公表した。具体的には旧ユーゴ諸国とトルコの計7カ国がリストに含まれている。
ただ、難民問題への対応をめぐって域内の世論は二分しており、12日には各地で賛成派と反対派によるデモが行われ、合わせて数万人が参加した。ロンドンではキャメロン首相が打ち出した向こう5年間で2万人の難民を受け入れる計画に対し、対応が不十分と主張するグループが「難民の命を救え」などと書かれたプラカードを掲げて市内を行進。マドリード、ベルリン、ハンブルク、コペンハーゲン、ストックホルム、ヘルシンキなどでも移民や難民の受け入れを支持するグループがデモを行った。一方、ワルシャワではおよそ5,000人の受け入れ反対派が抗議活動を展開。プラハやブラチスラバでも反対デモが行われた。
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