インドネシア:中国店、ツアーなく閑散 バリ 新型コロナ、渡航禁止で
「人气」「北京味」……。中国語の派手な看板が並ぶ飲食店に人の気配がない。バリ州バドゥン県クタ、市街地と空港を結ぶバイパス道路沿い。排気ガスで咳き込むと、マスクをつけた通行人から冷たい眼差しを向けられた。春節(旧正月)の連休から始まったバリの〝コロナ騒動〟から1カ月。普段は中国からのツアー客で賑わう一角は、新型コロナウィルスによる渡航禁止の影響で静まり返っていた。
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当地の旅行関係者によると、中国からの「格安ツアー」では、バスで島内を回り、地元の中華料理店や中国系の土産物店に立ち寄るのが一般的だった。つまり、観光地巡り以外はすべて中国系ネットワークで完結するという消費システム。「現地に金を落とさないシステム」と近年、地元から批判を集めながらも続いていたが、新型コロナウィルスをめぐって中国人旅行者が入国禁止措置を受けたことで、関係店は深刻な打撃を受けた形だ。
クタで10年以上、土産物屋を営むという華人のリリーさん(51)は「協力していたツアー会社とも連絡がつかなくなった。このままでは商売にならない。一体いつまで続くのか」といら立つ。「飲食店は開店していると赤字が出るから、すぐに閉まっていった」。リリーさんの店も、このまま客足が戻らなければ休業を考えるという。
深刻そうにシャッターを見つめる人影があった。中華料理店で働いていたバリ出身のインドネシア人、マデさん(36)は2週間ほど前、華人のオーナーから休業を言い渡され、以降連絡がつかなくなったという。「ひょっとしたら営業しているんじゃないかと思い見に来た。いつまた仕事に戻れるのだろうか……」。
影響は格安ツアーの関係店にとどまらない。ヌサドゥアにある高級ホテル・リッツ・カールトンのマネージャーは「中国人旅行者のキャンセルが相次ぎ、客室の利用率は約45%にとどまる。オフシーズンを加味しても厳しい」と漏らす。モール・バリ・ガレリアでシャネルの化粧品を扱う売り場責任者は「日本人や韓国人は来てくれるが、大きな割合を占めていた中国人客が来ない痛手は大きい。売り上げの大幅減は避けられないだろう」と話した。
バリ州の統計によると、2019年のバリへの中国人旅行者数は118万6057人で、全体の18・9%を占めた。国別では豪州に次ぐ2位となっている。
■邦人に影響も
新型コロナウィルスの感染拡大を受け、現地のインターナショナルスクールや日本語補習校、日本人会の活動などでは、約2週間以内に日本を含め感染が確認された国や地域に渡航歴のある人の出席や参加を控えるよう呼びかけられている。2月にはバリ・ヒンドゥーの祭礼「ガルンガン」に伴う休暇があり、一時帰国者などが影響を受けた。
また観光関係の在留邦人からは、日本の春休みシーズンを前に感染が広がっており、旅行キャンセルが相次ぐのでは、との懸念が聞かれる。当地の日本料理店関係者は「テロやアグン山の噴火など、バリへの旅行が落ち込む時があった。今回もそうならなければいいが」と不安を口にした。
2月上旬に約5千人の中国人が帰国せずにバリに残ったとの報道があった。在留邦人の一人は「(日系スーパーの)パパイヤに一時期中国人がたくさん来ていた。残った人が高級ホテルからキッチン付きの安宿に移り、自炊を始めていたのでは」と話す。すでに多数が帰国したとみられる。(バリ島、大野航太郎、写真も)
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/51066.html
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