2019年7月25日

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インドネシア:「自閉症の人が働ける場に」 カフェをオープン  発達障害のバリスタ 幸司さん

インドネシア:「自閉症の人が働ける場に」 カフェをオープン  発達障害のバリスタ 幸司さん

日系インドネシア人の父と日本人の母を持つ、元自閉症の幸司サントソ衛藤さん(25)が切り盛りするカフェが21日、南ジャカルタ区クバヨランバルにオープンした。1年かけてバリスタの勉強をした幸司さんが、コーヒー作りから接客まで行う。将来的には自閉症の人たちが働ける場所にしたいと考えている。

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「お飲み物まだですよね」「皆さん、エスプレッソですね」
 
開店イベントが行われた21日。次々やって来るお客さんに、エプロン姿の幸司さんが声を掛けていた。注文を聞くと、急いでカウンターに戻り、真剣なまなざしでコーヒーを入れる。傍らでは栄養士の資格を持つ母、由美子さん(59)が「グルテンフリー(小麦粉不使用)です」と手作りケーキを勧める。
 
幸司さんは3歳半のときに自閉症と診断された。さまざまな療育を重ね、徐々に回復。人との関わりがやや不得意ながらも、コミュニケーションが取れるようになった。6歳のころには発達障害の中でもアスペルガー症候群と診断された。
 
バリスタに興味を持ったのは1年半ほど前。小学校からの友達がバリスタになったことがきっかけで、両親にも背中を押され、1年間、講習を受けてきた。
 
2年前から幸司さんのセラピーを担当し、今回のカフェを企画したジャカルタ在住のセラピスト、夏矢樹さん(48)は当初の幸司さんについて「『僕は人の役に立てない、別の世界にいってしまいたい』とネガティブだった」と振り返る。
 
「人の役に立てるということを自覚していってもらいたい」。カフェ開店にあたり、夏矢さんは幸司さんをリーダーにし、由美子さんやボランティアスタッフのサポートを最小限にとどめることにこだわった。バリスタは幸司さん1人。コーヒー作りに加え、開店1時間前の掃除から接客、会計、閉店作業までこなす。
 
多くの自閉症児と向き合ってきた夏矢さんによると、日本では、自閉症の人は作業所で集団で働いたり、アートの才能を生かして絵を仕事にしたりすることが多い。一方で幸司さんは「人と関わっていきたいという気持ちがある子。失敗してもいいから1人でやり、培った経験を次に伝えることが大事だと思った」と言う。
 
将来的には幸司さんが教え役となり、自閉症の子どもたちの職業訓練も行っていく。「自閉症の人に勇気を与え、来たら元気になるコミュニティーにしたい」(夏矢さん)と、店名は「コウジ・ゲンキ・プロジェクト」にした。
 
幸司さん本人も「子どもたちに教えて、彼らが仕事ができるようにしたい」とやる気だ。「そのために、ヤヤサン(自閉症児支援センター)の近くなどにカフェの支店を増やしたい」と将来の展望を語った。
 
店内にはリラックスできる映像と音楽が流れ、由美子さん考案の健康志向のデザートも提供。夏矢さんによるセラピーも受けられる。自閉症など心身の健康に悩む人が、心穏やかに過ごせる工夫が詰まっている。
 
営業は月~金曜日の午前10時~午後5時。場所はJl. Cibulan II No. 15, Kebayoran Baru(木村綾、写真も)
 
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/48624.html

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