独自動車メーカーに黄信号、中国市場の変調で
独自動車業界の先行きに懸念が出てきた。世界最大の中国市場で停滞感が強まっているためだ。メーカー各社は同市場への依存度を深めており、需要の減少が長期化すると影響は大きい。販売減の背景には、政府の汚職・環境対策の強化のほか、経済そのものが構造危機に陥っていることもあるとみられる。
独メーカーの上半期販売台数をみると、最大手のフォルクスワーゲン(VW)グループは前年同期比0.5%減の504万台へと落ち込んだ(下の表を参照)。主力のVWブランド乗用車が3.9%減の295万台と振るわなかったことが響いた格好だ。
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6月に限ると、VWグループ販売は前年同月比4.3%減の84万400台と減少幅が大きく、VWブランド乗用車は8.6%減の47万700台へと大幅に落ち込んだ。欧米の制裁で市場が縮小するロシアや景気が長期低迷するブラジルのほか、中国需要が冷え込んでいることが響いた格好だ。
中国汽車工業協会(CAAM)が10日発表した同国の6月の自動車販売台数は前年同月比2.3%減の180万台となり、3カ月連続で落ち込んだ。VW傘下の高級ブランドであるアウディは5.8%減の4万7,831万台となり、前月に引き続き後退。2015年に同国で計60万台を販売するとした目標を撤回した。
BMWは上半期の同国販売が前年同期を2.5%上回ったものの、伸び率は前年同期の23%から大幅に縮小した。6月は10年以上ぶりに販売減となった。アウディとBMWは需要減に苦しむディーラーに巨額の資金支援を行っている。
メルセデスベンツの中国販売は好調で、上半期は約22%の伸びを記録した。同社は競合アウディ、BMWに比べ同国事業が振るわなかったことを受けて大がかりな巻き返しを図っており、それが奏功した格好だ。
<販売台数の35%は中国=VW>
独連邦銀行(中銀)は7月の月報で、中国をはじめとする新興諸国の経済成長率が鈍化傾向にあることを指摘した。今年は平均4.25%と、10年の7.5%を大きく下回る見通し。輸出成長率をみても、00~10年は年率10%に達していたが、その後は5%程度にとどまっている。
経済指標の悪化は景気循環による一時的な現象ではなく、構造的な欠陥に基づくというのが連銀の見方だ。新興国のほとんどは依然として石油、鉱石、農産物といった資源の輸出に依存しており、先進国からの技術輸入やトランスファーを活用したキャッチアップのスピードはここ数年、鈍化。競争力の高い経済の構築に必要な改革は停滞している。
中国はこれまで、農村の余剰人口を経済成長に活用できたが、そうした余剰人口は現在ほぼなくなっている。また、従来は有効だった積極的な投資も過剰生産能力を生み出しており、幅広い産業で調整が必要となっている。今後は一人っ子政策のしわ寄せで労働力人口が急速に減少していくため、高い成長率を維持するのは一段と難しくなる。
ドイツの自動車メーカーは近年、中国市場の急成長を巧みに利用して販売台数を大幅に拡大してきた。VWが世界最大手の座をトヨタ、米ゼネラル・モーターズ(GM)と争うまでに成長できたのも同国市場のおかげだ。
ただ、その反面で中国依存は大きく高まり、販売台数に占める同国の割合(今年上半期)はVWグループで35%、VWブランド乗用車では44%に達する。
中国経済の厳しい状況を踏まえると、今後は同国販売の急増が見込めない状況で、各社は事業戦略の見直しを求められそうだ。
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FBC Business Consulting GmbH
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