独取引所が、ロンドン証券取引所との合併とフィンテック支援策を発表
ドイツ取引所は2月下旬、地元フランクフルトの金融競争力にかかわる2つの計画を相次いで発表した。1つは競合ロンドン証券取引所(LSE)との合併、もう1つはフィンテックを支援するための拠点開設だ。後者は同市の発展に確実に寄与する取り組みと評価されているが、前者は合併後に設立するグループ統括会社の拠点をロンドンに置く方針のため、ドイツの政財界からは悪影響を懸念する声が出ている。
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ドイツ取引所とLSEは23日、メディア報道を追認する形で合併に向けて協議していることを明らかにした。両取引所の時価総額(23日時点)はそれぞれ155億ユーロ、118億ユーロで、欧州ではそれぞれ1位、2位を占めているものの、世界的にみると3大勢力の米CMEグループ(283億ユーロ)、米ICEグループ(266億ユーロ)、香港証券取引所(245億ユーロ)に大きく水をあけられている。合併すればICEを抜いて2位に浮上。世界の最大手グループの一角に食い込み、業界再編で主導的な立場を取りやすくなる。事業効率やコスト面のメリットも大きい。
23日の時点では伏せていたが、両社は26日、合併後に設立するグループ統括会社を英国法に基づきロンドンに設立することで合意済みだと発表した。これがドイツの政財界に波紋を広げている。フランクフルトは中間持株会社となるドイツ取引所の本社として重要な役割を今後も果たしていくと両社は強調しているものの、新設されるグループの一事業拠点に格下げとなることから、事業を取り巻く環境が大きく変われば主要機能が他の拠点に移管される可能性を排除できないためだ。
ドイツ取引所の地元ヘッセン州の証券監督局は、同合併計画が金融都市フランクフルトにもたらす影響を吟味する方針で、認可しない可能性があることを示唆している。
同計画への警戒感の背景には、かつて同市にあった世界的な製薬・化学会社ヘキストのたどった不幸な軌跡がある。ヘキストは化学事業からの撤退を決めたうえで1999年に同社よりも規模が小さい同業の仏ローヌ・プーランクと「対等合併」。新会社アベンティスの本社を仏ストラスブールに設置した。この結果、ドイツ側の影響力は弱まっていき、アベンティスは04年、仏政府の支援を受けた仏製薬大手サノフィに吸収合併された。フランクフルトはサノフィの重要拠点であり続けているものの、事業方針の決定権はパリにあるサノフィ本社が握っており、事業拠点としての魅力が薄れればフランクフルトは将来的に縮小される可能性がある。旧ヘキストの取締役でローヌ・プーランクとの合併に反対したカールゲルハルト・ザイフェルト氏は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、投資の決定権を持つ本社が地元にあることは重要だと強調した。
ベルリンからフィンテック誘導へ
ドイツ取引所は24日、ITを活用した新しいタイプの金融サービス事業者であるフィンテックの支援拠点をフランクフルトに開設すると発表した。ヘッセン州政府は同市にフィンテックのクラスターを形成する政策を打ち出しており、ドイツ取引所はこれに連動して同分野のスタートアップ企業などを援助。フランクフルトの国際金融競争力を向上させていく考えだ。
IT設備の完備したフィンテック支援拠点を市東部のボルンハイム地区に4月に開設し、スタートアップ企業などに提供する。同拠点に入居した企業はドイツ取引所の社員の支援を受けながら事業アイデアの具体化に取り組む。同社社員は事業資金の確保、事業ネットワークの構築、潜在顧客である金融企業への仲介といった支援を行う。
同拠点に入居予定のフィンテックは現在3社で、そのうち2社は金融ポータル、1社は保険分野に特化している。同拠点はフランクフルトの金融競争力向上を目的としているため、ドイツ取引所は同社に事業に関係のないフィンテックも支援する。
ドイツではIT起業の地として首都ベルリンの人気がダントツで高い。起業に適した環境が整っているためだ。インフラの充実や生活の質の高さ、比較的安い家賃と物価も吸引力になっている。
ただ、フィンテックの顧客企業は金融センターであるフランクフルトに集中しており、ベルリンのフィンテックは顧客を開拓するために長距離の出張を余儀なくされている。フランクフルトの立地環境が改善されれば、フィンテックが同市に拠点を構えやすくなり、顧客企業との交流が活発化。市の金融競争力アップにつながる。
photo by Bankenverband – Bundesverband deutscher Banken on flickr
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