アジア開発銀行のフィリピン・電動トライシクル事業、日本企業が落札
アジア開発銀行(ADB=本部マニラ首都圏マンダル―ヨン市)が5億ドルの巨費を投じ、フィリピン国内のトライシクル(サイドカー付き3輪車)350万台の内、10万台を電動化する事業で2015年5月に行われた3000台分の入札で、日本の総合電気メーカー『渦潮電機=本社愛媛県今治市』が落札していたことが明らかになった。
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この電動化事業は2011年に始まっているが、フィリピン当局側特有の入札に関する慢性的な不能率、遅滞から入札延期が長らく続いていた。
今回の入札には4社が応札したが、同社のみ技術審査を通過し、契約への交渉権を得ていた。しかしながら同社の提示額は当初3460万ドルであり、約400万ドル、13%もの大幅値引きを行っていて入札における不明朗さは残った。
落札額は3074万7千ドルで、1台当たり1万ドルを超える額となり、これには車体本体以外に充電のための付帯設備やメインテナンスが含まれる。
しかし、1人当たりGDPが5000ドル程度の水準のフィリピンで、貧困層に属するといわれるトライシクル事業者=運転者がこの高額な電動トライシクルを購入、維持できるかどうか、何らかの補助制度はあるのだろうが、その辺りは明らかにされていない。
今回落札した車種は同社が開発し、市販もしている『68VM』【写真】を基に改良されるが、同車種の性能は運転手を含めて7人乗り、1回の充電で60km(20km/h走行)が可能。最高速度は50kmで従来の鉛電池ではなくリチウムイオン電池や独自の電池制御システムを搭載している。
ADBは電動トライシクル事業について、ガソリンの輸入額を年間1億ドル減らし、二酸化炭素(Co2)排出量を年間26万トン削減すると見ているが、事業計画当初と比べて原油価格は半分以下となり、今後も原油安の基調が続く中でその根拠が甘い事が判明。
また、フィリピンの交通事情として乗車定員など無視する過重な状態でトライシクルが運行されているのが実情で、ガソリン車と比べて耐久性のない電動車がフィリピン全土で受け入れられるか疑問が持たれている。
このため、大学構内や限られた観光地や監視の目が行き届く大都市部でのみ使われるのではないかとの見方もあり、既にそういった地域では運用されている。
今回、落札した渦潮電機は電動トライシクル事業が発表されてからフィリピンで開発事業に着手、2013年3月に100%出資の現地法人を設立した進取の気性を持つ企業で2014年12月にはホンダから人を迎えて新たに社名を『ビーマック・エレクトリック・トランスポーティーション・フィリピン』に変更した。
本プロジェクトは2011年に発表し、2016年度中に10万台の電動化を終える予定であったが、今後フィリピンのエネルギー省は1万7千台の入札を予定しているだけで、今回のようやく3千台のみ落札という状況では、実現は相当先というより実施自体が雲散霧消となるのではないかとの危惧もある。
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