2017年12月19日

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ブラジル証券取引所で4年ぶりの大型上場

ブラジル証券取引所で4年ぶりの大型上場

日本は12月に入り株式市場への新規上場(IPO)が相次ぎ、新銘柄のニュースが連日伝えられているが、今年はブラジルでもIPOが多かったようだ。

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そんな2017年の締めくくりともいえる大型IPOが、市場を賑わわせている。
 
グローボ系ニュースサイト「G1」他現地メディアが12月15日づけで伝えたところによると、ブラジル石油公社(以下「ペトロブラス」)傘下の石油流通業者ペトロブラス・ディストリブイドーラ(以下「PD」)が同日付で上場したという。
 
PDの上場は今年の上場銘柄としては11番目にあたる。
 
今回の上場は新株発行と旧株売出を組み合わせたもので、大株主ペトロブラスは今回、PDに対する持分の30%にあたる株式を売出した。
 
ペトロブラスはこの売出により得た資金50億レアル(約1700億円)を借入の返済に充てると見られている。
 
公募・売出価格は1株15レアルとなったが、上場直前の需要申告(ブックビルディング)時に提示されていた仮条件の価格レンジ、15~19レアルの下限だったことから、需要は想定より低かったことが推測される。
 
仮条件決定時期に、国会での社会保障改革法案の採決が2018年にずれ込む可能性が報じられ、経済の回復に影響するとみた投資家が値付けに消極的になったことが公募・売出価格の決定に影響したとみられる。今回IPOで市場に放出された株数は3億3500万株だったが、当初予定されていた2億9125万株よりも15%上積みされた。
 
仮に上限額で売り出されていれば、ペトロブラスの資金調達額は70億レアル(約2400億円)を超えていたことになる。
 
とはいえ、法案採決延期という外的要因だけが価格の上値を押さえたわけではない。クレディ・スイスは顧客向けに出したレポートで、PD株式について「精査を要する」と記載した。
 
株式の購入にあたっては、PDがペトロブラス傘下時代から引き継いだ不透明性から生じるリスクや、収益構造、経営効率等の向上に向けての企業努力の姿勢も考慮すべきだからだ。
 
事実、PDとほぼ同時期にIPOの需要申告、仮条件決定を行い、12月18日に上場予定のBKブラジル(バーガーキングのブラジルでの事業運営会社)については仮条件で提示された価格帯の上限が公募・売出価格となっている。
 
PDの株式売却は、ペトロブラスグループの2017-18年の投資回収計画の目玉の一つだ。同期間中、グループは傘下企業の株式売却で120億米ドル(約1兆3440億円)の回収を計画している。IPOを選ぶ前にペトロブラスはPDの持分を市場外で他社に売却しようとしたが、裁判所から「待った」がかかった。
 
PDのガソリンスタンド、イピランガにはシェル系列ハイーゼンという競合がいるが、イピランガは国内の燃料流通ではトップシェアを守っている。イピランガブランドのスタンドは全国に8000軒あり、昨年は860億レアル(約2兆9240億円)売り上げたが、当期損益はマイナス3億1500レアル(約107億円)という結果に終わった。
 
今年は競争の激化により8月までで売上が7.6%減少したものの、燃料市場におけるシェアはPDによると、業界におけるシェアは小売で24.5%、卸で43%とのことだ。
 
「今年の早い時期にディーゼル油の輸入解禁があり、以降、新規の市場参入が増えました。今後も市場は競争が激化していくことは確実です」(PD広報)
 
2016年10月以降、ほぼ国産で賄われていたブラジル石油市場で輸入業者の参入が認められ、ペトロブラスは国際価格を意識したガソリン価格の値付けを行ってきた。
 
PDのIPOは、2017年に行ったペトロブラスによるグループ会社株式放出の2社目だ。11月にはアマゾナス州のアズラゥン油田株式の持分を5450万米ドル(約61億円)で売却している。
 
マーケットの需要は想定より低めだったものの、ペトロブラスに50億レアルを調達させたPDは、2013年4月に上場し、115億レアル(約3900億円)を調達したブラジル銀行傘下の保険事業者BBセグリダーヂ以降で最大のIPO案件となった。
 
2017年はこのほかにも規模の大きなIPO案件が報じられた。
  
2017年のブラジルにおけるIPO銘柄で比較的規模が大きかったのはカルフールで、資金調達額は約49億レアル(約1660億円)だった。PDはこのカルフールを抜いて調達額では今年最も大きい案件となった。
 
年内にブラジルで株式上場を果たしたのは12月15日時点で11社で、これは近年のブラジルでは異例の数だ。2014-16年、不況の時期のIPO件数はたった3件だった。
 
一方、同時期に非上場化した企業は25社、うち、TOB(株式の公開買付)による非上場化が13件あり、その中でもアルテリス、ソフィーザ銀行、アウパルガタス、ワールプールが大型で話題を呼んだ。
 
2017-18年のペトロブラスグループの投資回収計画は総額210億米ドル(約2兆3520円)で、売却対象には油田、肥料製造事業、アフリカやアメリカ合衆国の精油所などがある。回収方法が市場外かIPOに絡めた市場売出かについては未定とのことだ。
 
「当社は今後数か月で成約する案件も見込んでおり、2018年は年間を通じて交渉を活発化させていく所存です」(ペトロブラス広報)
 
12月15日、PDの上場初日の株価終値は1株16レアルだった。
 
ブラジルの株価は目下、社会保障制度改革法案の採決日程に関するニュースに左右されている状況だ。市場関係者は22日の国会閉会前の採決を固唾をのんで見守っている。
 
(文/原田 侑、写真/Divulgação)
 
ソース:http://megabrasil.jp/20171217_37987/
 
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