フォルクスワーゲン、排ガス不正の内部調査概要を発表
独自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は10日、ハンスディーター・ペッチュ監査役会長とマティアス・ミュラー社長が記者会見を開き、9月に発覚した排ガス不正問題についてこれまでの内部調査の結果を明らかにした。不正ソフトウエア搭載の原因は、1回の不正行為によるものではなく、複数の誤りの連鎖から発生したものであると説明する。同社では、内部調査と外部による調査を進めており、合わせて約450人が原因解明に取り組んでいる。内部調査は近く終了する一方、外部調査は膨大なデータを分析するため、来年も当面続くとの見通しを示した。ただ、内部調査がほぼ終了していることから、ソフトウエアの不正について今後さらに大きな事実関係が明るみになる可能性は低いとも見られている。
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■ 複数の誤りの連鎖が原因
VWはこれまでの内部調査から、不正に至った原因として、◇従業員の個人的な誤った行動および不備◇複数のプロセスにおける欠陥◇企業の一部における規則違反を容認する姿勢――の3つの要素が相互に関連していると説明した。プロセス上の欠陥が個人的な不正行為を助長し、不正ソフトウエアの搭載を阻止することができなかったとしている。また、ITシステムの構造上の問題も明らかになった。ITシステムの構造上の問題はすでに解決したという。
また、発端は2005年に米国市場でディーゼル車の販売を大々的に強化する戦略決定にあったとし、「EA189」タイプのエンジンが米国の厳しい窒素炭化物(NOx)規制値を規定のコストおよび期限内にクリアできなかったため、不正ソフトウエアを搭載するに至ったとしている。その後、NOx基準をクリアするための技術的な措置が可能であったにもかかわらず、そのような対応に至らなかったとも言及した。
VWは今回の調査結果を受け、今後は排ガス試験を原則として外部および独立機関を通して実施することを決定した。また、抜き打ち検査として実際の路上走行での試験も実施する方針を示した。
■ 4月の株主総会で外部調査の進捗状況を報告
外部調査は米法律事務所のジョーンズ・デイに委託している。内部調査の結果は、ジョーンズ・デイに提示しており、会計監査大手のデロイトがジョーンズ・デイの作業をサポートしている。外部調査では、従業員約380人から1,500件を超える電子データを収集しており、データ量は102テラバイトに達している。外部調査の進捗状況については2016年4月21日の年次株主総会において報告する予定。
■ 新しい経営構造を導入
ミュラー社長は10月に発表した重要指針と同様に、今回の会見でもVWグループに新しい経営構造を導入する方針を示し、今後はブランドや地域の独立性を高め、分散型の経営構造とする意向を示した。取締役会はブランドを超えた全体的な戦略を考え、相乗効果を高めることに注力する。
また、ミュラー社長は従業員の考え方や仕事に対する姿勢にも言及し、「最高の従業員と優れた組織を持ったとしても、正しい振る舞いや物の考え方がなければ何もできない」と述べ、「我々はイエスマンではなく、優れた意見を持って信念やプロジェクトに立ち向かう管理職や技術者を必要としている」との考えを示した。
■ 欧州のリコール、1月から段階的に実施
会見では欧州で実施する不正ソフトウエアを搭載したディーゼル車に対するリコール(回収・無償修理)のスケジュールも発表した。対象となる「EA 189」エンジンは、1.6リットル、2.0リットル、1.2リットルの3種類がある。
最初にリコールを開始するのは2.0リットルエンジンで、2016年1月に開始する。第2四半期には1.2リットルエンジンのリコールを開始する予定。両エンジンはいずれもソフトウエアの更新のみとなる。1.6リットルエンジンについては、ハードウエアを追加する必要があり、第3四半期にリコールを開始する計画。該当する顧客にはVWが個別に連絡を取り、コストもVWが負担する。
なお、米国ではNOxに対する規制が厳しく、欧州と異なる対応が必要となる。VWは米環境保護局(EPA)やカルフォルニア大気資源局(CARB)と引き続き協議し、具体的な対応が決まり次第、発表するとしている。
photo by AndreasPraefcke
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