チェコ下院選挙、前財務相率いる「不満を抱く市民の運動(ANO)」が圧勝
チェコで20、21日実施された下院選挙(定数:200)は、富豪のアンドレイ・バビシュ前財務相(63)率いるポピュリスト政党「不満を抱く市民の運動(ANO)」が29.6%の得票を確保し、他党に大差をつけて勝利した。
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改選前の第1党、社会党(CSSD)は7.3%まで票を減らした。ANOは今後、安定した政権を樹立するため他党との連立交渉に臨むが、詐欺疑惑のさなかにあるバビシュ氏と手を組もうとする政党が少ないことから組閣は難航が予想される。排外主義の極右政党と連立する可能性もある。
今回の選挙では、ANOが2013年の前回選挙から得票率を11ポイント近く伸ばして圧勝。2位の中道右派・市民民主党(ODS、得票率:11.3%)に18ポイント以上の差をつけた。3位はインターネットの高速化や大麻合法化を掲げる新興政党「海賊党」(10.8%)、4位は日系人のトミオ・オカムラ氏が率いる極右政党「自由・直接民主主義党(SPD)」(10.6%)だった。
共産党(KSCM)は前回選挙の半分程度となる7.8%にとどまった。6位に終わった社会党はチェコスロバキアが分離した1993年以降で最悪の結果となった。中道右派の「TOP 09」(5.3%)と、地方分権化をうたう「市長・無所属(STAN)」(5.2%)も少数阻止条項を突破して議会入りを確実にした。
ANOが2党連立で過半数または過半数弱を確保するには、ODSか海賊党、極右のSPDとの協力が必要だ。しかし、ODSと海賊党はすでに野党として活動していく方針を明確にしている。
チェコは景気が好調で、失業率も欧州連合(EU)内で最低水準にある。このため、選挙戦では経済や社会保障よりもEUに対するスタンスが争点となった。ANOはEU離脱こそ目指してはいないが、難民強制受け入れ決議に激しく抗議し、ユーロ導入にも懐疑的な姿勢だ。
伝統的政党への不満も表面化した。収賄などのスキャンダルが無くならないためだが、それでも、詐欺疑惑の渦中にあるバビシュ氏が大勝した背景には「候補者(党首)個人を好意的にみているかどうか」が有権者の判断の大きな理由になったからとみられている。
また、大企業を経営してきたバビシュ氏の経歴を評価し、「任せれば国をうまく運営してくれる」という期待も集めたもようだ。
ANOは議会第2党となった前回選挙後、社会党と連立して政権を担い、バビシュ氏は副首相兼財務相を務めた。しかし、脱税疑惑のため、今年5月、辞任を余儀なくされた。現在は、子会社がEUの中小企業助成金を受給できるように書類の上で独立させ、数年後に再び子会社化したという容疑で、検察の捜査を受けている。
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