独・与党大敗、極右が初の国会進出難民受け入れ響く、社民下野で大連立に幕
ドイツの連邦議会(下院)選挙が24日実施され、即日開票の結果、2大政党である与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)がともに得票率を大幅に落とし、移民排斥を掲げる新興極右「ドイツのための選択肢(AfD)」が第3党へと躍進した。
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極右政党の国会進出は戦後初めてで、ナチスの過去に批判的に取り組んできたドイツの政治文化に暗い影を落としている。SPDが下野方針を打ち出したことから、次期政権はメルケル首相が主導するCDU/CSUと小政党の自由民主党(FDP)、緑の党の3党連立となる見通しだ。
CDU/CSUの得票率は前回(2013年)の41.5%から32.9%へと8.6ポイント低下し、戦後2番目の低水準を記録。SPDは25.7%から20.5%へと5.2ポイント下落し、戦後最低を更新した。(下のグラフ参照)
野党はすべて得票率を伸ばした。特に大量の難民を受け入れたメルケル政権への批判を全面的に打ち出したAfDは前回の4.8%から12.6%へと約2.7倍に拡大した。同党に投票した有権者の内訳をみると、最も多いのは前回選挙の棄権者で全体の35%を占めた。前回に引き続きAfDに投票した人(24%)を大幅に上回る水準だ。CDU/CSUからの鞍替えも21%と多い。
AfDは年金や賃金、生活保護の水準に不満を持つ低所得層や先行きに不安感を持つ中間層の支持を強く受けている。これらの有権者は、難民支援に巨額の予算を投じる“ゆとり”があるならばその分を年金などの引き上げや税負担の軽減に回すべきだと考えており、世論調査機関ヴァーレンのアンケート調査ではAfD支持者の98%がメルケル政権の難民政策を批判している。インフラテスト・ディマップのアンケート調査では、同党支持者の60%が投票理由として「他の政党に失望したため」と回答。「政策方針が良いため」は31%にとどまった。
従来は東部地区(旧東ドイツ)に強い支持基盤を持つ左派の左翼党がこうした弱者の受け皿となっていた。だが、左翼党は人権重視の立場から難民受け入れに積極的な姿勢を示しており、今回の選挙では一部の有権者がAfDへと流れた。AfDは西部地区に比べて所得水準が低い東部地区に限ると得票率が22.8%に達し、左翼党(同17.1%)を抜いてCDU/CSU(28.6%)に次ぐ2位につけた。
FDPは得票率を前回の4.8%から10.7%へと拡大し、議席獲得に必要な5%を超えて2期ぶりに議会進出を果たした。カリスマ性のあるクリスティアン・リントナー党首の人気のほか、同党とCDU/CSUの中道右派政権実現を望むCDU/CSU支持者の一部が戦略的な動機からFDPに投票したことが大きい。
左派勢力の左翼党と緑の党は主にSPDから支持者を奪う形で得票率を伸ばした。
SPDは1月、マルティン・シュルツ前欧州議会議長(現党首)を同党の首相候補に担ぎ出して選挙戦を開始した。貧富の格差是正など構造改革の見直しを前面に押し出し、一時は人気が急上昇したものの、その後は目新しい政策方針を打ち出せなかったことから、メディアに登場する頻度が低下。「シュルツ効果」が弱まった。同候補が打ち出した構造改革是正方針は、急進左派の左翼党を含む左派連立政権の樹立が前提になるとみられたことも中道支持層の警戒感を引き起こしネックとなった。
ユーロ圏改革が連立交渉の焦点に
SPDが下野を決めたのは、CDU/CSUとの連立政権では安定した人気を誇るメルケル首相(CDU党首)の陰に隠れてしまい、存在感をアピールできなかったためだ。2大政党からなる大連立政権では政策に不満を持つ有権者の声を拾い上げる適切な受け皿がなく、これがAfD躍進の一因となったという事情への反省も大きい。また、同党が下野すればAfDが野党第一党となることを阻止し、ポピュリズムに歯止めをかけられるという計算もある。
連邦議会は戦後長らくほぼ一貫して、2大政党のCDU/CSU、SPDおよび小政党FDPの3党で構成されていた。だが、時代の変化を受けて1983年に環境政党・緑の党が進出。2000年代にはシュレーダー首相(SPD)の構造改革に反発する勢力が左翼党を結成し、議会政党として定着した。これらの動きは主にSPDの勢力が弱まる形で進行した。
一方、右派陣営はこれまでCDU/CSUとFDPに限られ、分解が起きていなかった。だが、AfDはCDU/CSUから最も多くの票を奪う形で議会進出を果たしており、この流れが定着するとCDU/CSUは今後、勢力を大きく盛り返すことができない可能性がある。
各党の獲得議席数はCDU/CSUが246、SPDが153、AfDが94、FDPが80、左翼党が69、緑の党が67。総数は709で、過半数ラインは355となっている。過半数を確保するためには連立を組む必要があり、可能性としてはCDU/CSUとSPDの大連立継続と、CDU/CSUとFDP、緑の党の3党からなるジャマイカ政権(各党のシンボルカラー黒黄緑を合わせるとジャマイカ国旗と同じ配色になることにちなむ)樹立の2つが考えられるものの、SPDが下野を打ち出したことからジャマイカ以外に選択肢がない状況となっている。
ただ、産業界の利益を重視するFDPと、30年のエンジン車販売禁止要求など環境重視の緑の党では政策の相性が悪いことから、政権協議は難航が予想される。また、FDPのリントナー党首はフランスのマクロン大統領が提唱しメルケル首相が理解を示すユーロ圏全体の予算・財務相創設について、ドイツから他の加盟国に資金が流れる“パイプライン”となるのであれば協力しないと明言していることから、連立協議ではこの問題も大きな焦点となりそうだ。
ソース:http://fbc.de/sc/sc40355/
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