独自動車部品大手「グラマー」、会社乗っ取りをひとまず阻止
自動車部品大手グラマーの株主総会が24日、ドイツ南部のアムベルクで開催され、大株主ハスター家系の投資会社2社が提出したハルトムート・ミュラー社長と監査役3人の解任要求が他の全株主の反対で否決された。これによりハスター家による会社“乗っ取り”の危機がひとまず回避された格好。ただ、ハスター家は対決姿勢を崩しておらず、グラマーの経営に今後も影を落とす見通しだ。
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ハスター家はボスニアの事業家一族で、独投資会社ハログとカスカーデ・インターナショナル・インベストメンツを通してグラマーの議決権付き株を23%以上、保有。グラマーは売上高が増えているものの、利益率は低下しているとして現経営陣を批判し、社長解任と、6人いる株主側監査役のうち3人を傘下企業プリベント関係者と入れ替えることを要求している。
プリベントは昨年、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)への部品供給を拒否し、VWの生産ラインを停止させた。ダイムラーに対しても訴訟を起こしている。このため自動車メーカーはハスター家に強い警戒感を持っており、同家がグラマーを乗っ取ることを望んでいない。ミュラー社長によると、ハスター家との対立が明らかになった1月以降、グラマーの新規受注は60%落ち込んだ。
株主の危機感も大きく、今回の株主総会には議決権ベースで67.3%もの株主が出席。総会ではハスター家の行動を「最悪の種類の強盗資本主義だ」と批判する発言も出た。ドイツ有価証券投資家保護協会(DSW)の関係者は「グラマーはミュラー社長のもとで素晴らしい発展を遂げた。国外事業の拡大戦略は正しく、決算の数値も素晴らしい」と述べ、経営陣に対する全面的な支持を表明した。
一方、ハスター家側の弁護士は、現経営陣は価格交渉で自動車メーカーの言いなりになっていると批判した。ハスター家が経営の主導権を握った場合は「VWが強要する価格を受け入れない」と強調。価格交渉で強気の立場を打ち出すことで、グラマーの収益力を強化できると訴えた。VWは価格交渉の姿勢が特に厳しいことで知られている。
ハスター家は出資比率引き上げか
グラマーは2月、ハスター家による会社乗っ取りを阻止するため、中国の車両内装部品メーカー寧波継峰汽車零部件と戦略提携した。寧波継峰汽車零部件は独子会社JAPキャピタル・ホールディングを通してグラマーの転換社債を引き受け、5月に株式に転換。グラマー株15.07%を取得した。
ただ、この戦略提携は“特効薬”ではなく、経営陣とハスター家の対立は今後も続く見通しだ。
ハスター家側の広報担当者は株主総会後、「ハスター家は今後も重要な投資家としてグラマーへの出資を続ける」と述べたうえで、「グラマーの収益力と競争力を高めるために我々にできる範囲内で必要な変化の実現に向けてさらに働きかけていく」方針を明らかにした。具体的に何をするかは明示していないものの、出資比率を25%超まで引き上げ、経営の重要方針に対する拒否権を獲得する可能性がある。
そうした事態に発展すると、グラマーの経営は機能不全に陥る懸念がある。このためミュラー社長は総会後、「会社の繁栄のためにプリベントグループおよびその代表者との真摯な協議を行う準備が引き続きある」ことを強調した。話し合いを通して問題を打開したい考えだ。
自らの要求を貫徹するために部品供給停止などの強硬手段を辞さないハスター家に対しては批判的な意見が圧倒的に多いものの、支持の声も出ている。VWの元管理職は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に匿名で、「VWは自ら贅沢三昧をする一方で、サプライヤーをゴミのように取り扱う」と指摘。VWにとって必要不可欠なサプライヤーを買収し交渉力を決定的に高めたハスター家の行動は正しいと明言した。
※画像出典元:https://www.grammer.com/en/welcome-to-the-grammer-website.html
ソース:http://fbc.de/sc/sc39837/
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