2017年5月2日

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ブラジルで空前の起業ブーム到来!? 勤続年数補償基金が一時的に引き出し可能に

ブラジルで空前の起業ブーム到来!?  勤続年数補償基金が一時的に引き出し可能に

ブラジルは労働者向けの福利厚生が非常に手厚いといわれるが、その1つが勤続期間補償基金(FGTS)だ。

日本の雇用保険と退職金積立の一部の性質を併せ持ったような基金だが、日本と違って従業員拠出部分がなく、拠出金積立額は全額従業員個人名義の資産となる。

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拠出された額の一部が、存在することすら誰も知らない、遠くの山奥にある巨大箱モノ建設に使われる、という状態にはならない点も日本とは大きく異なる。
 
この基金は、連邦貯蓄銀行(通称、CAIXA/カイシャ)に労働者一人ずつに専用口座が開かれ、雇用主から直接その口座に積み立てられていく。雇用主が変わっても雇われる立場である限りは積み立ては続く。
 
ただしその口座からお金を引き出せるのは、会社都合による正当な理由のない解雇が発生した時、年金を受給し始める時、保険料を納めなくなって3年を経過した時等に限られていた。
 
今回、会社都合でなく退職し、以後失業状態にある人が一時的に資金を引き出せることとなった。
 
引き出し開始可能日は口座保有者の誕生日月によって異なるものの、2017年3月10日から7月末までの間、対象者は順次口座からお金を引き出せることになる。
 
ブラジル国内でもFGTSからの引き出し資金を誘い込む様々な商戦が繰り広げられているが、この資金を元手に起業を考えている個人も少なくはないようだ。
 
TVグローボは4月16日、経済情報番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」で、FGTSの積立金を元手に起業する人々に、FGTS基金の使い方と起業資金の算定に関する注意点について伝えている。
  
まず、起業の際、フランチャイズ店でもすべて自前で整える場合でも、開業から利益が出せるようになるまで1-2年かかることを考慮して資金繰りをすることが重要だ。ここは設立資金として準備すべき金額の算定に影響する。
 
財務専門学校DSOP エドゥカサゥン・フィナンセイラの教員、ヘイナウド・ドミンゴス氏曰く、設立資金のすべてをFGTS口座の残高から賄うことは避けたほうがいい、とのことだ。場合によっては外から借り入れたほうがいいこともある。
 
また、FGTS口座の資金は、老後の蓄えでもある。すべてを起業準備に使い切るのは得策ではない、とも付け加える。
 
「外部借入は常に悪いわけでなくて、設立後に得られる収益のレベル次第では外部借入を混ぜたほうがよい場合もあります。例えば、フランチャイズビジネスなどがそうです」(ヘイナウド・ドミンゴス氏)
 
フランチャイズ店経営の場合は、フランチャイザーから様々な支援を受けられるため比較的早く経営が安定化し、収益化できる傾向がある。そのため借り入れをしても早期に元利金返済を始めることも可能な場合もある。
 
「今のFGTS口座引き出し可能期間は、起業を考えている人にとっては間違いなくチャンスです。以前から自分が知識やノウハウを持っていて、自分でビジネスをコントロールできる分野への投資であれば自力開業をお勧めします。コントロールできないけど何か起業したいという場合は、フランチャイズ店経営の道を探るのがよいでしょう」(ヘイナウド・ドミンゴス氏)
 
引き出し期間開始後、多くの人が銀行窓口に押し寄せており、政府は一定程度の資金が市中に出回り消費の活性化が進むと見ている。その経済効果は300億レアル(約1兆200億円)ともいわれる。
 
一方、国の思惑と関係なく、自分の資産をより積極的に運用する機会ととらえている人もいる。今年に入ってからFGTS資金の代替的運用先として自社商品の収益実績の高さをアピールする投資アドバイザーの広告も多く見かけるようになった。
 
内需拡大策としてのFGTS一時的資金引き出し期間設定の評価は、まだしばらく先になりそうだ。
 
雇用主が勝手に自分の失業や老後に備えてくれるFGTSの制度はうらやましい限りだが、その基金をいざ「使っていい」と言われてすぐに使い道を決められる決断力にもお国柄を感じる。
 
(文/原田 侑、写真/Antonio Cruz/Agência Brasil)
写真は3月10日、勤続期間補償基金(FGTS)を引き出す人が殺到した連邦貯蓄銀行(カイシャ・エコノミカ・フェデラウ)
 
ソース:http://megabrasil.jp/20170501_35378/ 
 
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