午前9時過ぎ、数軒隣の店から火の手が上がっていることに気がついた。仲間たちと火を消し止めようとしたが、周りには用水路や水道といった水源が何も見当たらない。1時間ほどして消防車が到着したが、すでに手遅れ。黒煙を上げながら、火の手は市場全体を包み込んでいた。
タウフィックさんは、店の焼け跡から回収したエアコンの室外機を鉄屑回収業者に売り、当面の生活の足しにするという。
熱でひしゃげた鉄筋、粉々に砕けた瓦、溶けた菓子の袋━━。焼け跡を埋め尽くすがれきの熱と放水された水で湿度が上がり、炭の焼けたような臭いがあたりを漂う。
同市場でサンバルなどの調味料の店を営んでいたコシムさん(32)も、焼け跡から換金できそうな鉄骨を拾い集めていた。今日は店を休んでいたが、朝のテレビニュースで火事のことを知った。「店の再建なんて、今はまだ考えられない。とにかく、今日を乗り越えないと」。そう言って、リアカーに積んだ鉄屑を見つめた。(高地伸幸、写真も)
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/53055.html