中国政府は5月、香港での「反逆や扇動、破壊行為、外国勢力との結託、テロ行為」を禁止する法律を制定するとしていた。香港国家安全維持法には、中国が独自の治安機関を香港に置くとの規定もある。
台湾の蔡英文総統は6月30日、「失望した」と述べ、中国共産党の主張する「一国二制度」が実現不可能であるとの証明だと述べた。また、香港人への人道支援を行う台湾香港事務所は7月1日から業務を開始するという。
同日、台湾政府の行政院(内閣)大陸委員会は、香港返還からわずか23年で中国共産党は「香港の高度な自治を50年変えない」という約束を破ったと指摘した。「香港立法院(議会)を迂回して可決された『国家安全維持法』は香港への支配を強めた。一国二制度の枠組みの下でも、香港の人権、自由、法治をさらに踏みにじった」と中国共産党を批判した。
日本の菅義偉官房長官は、香港の自由経済に基づく発展を支えた「一国二制度」が損われるとして、国家安全維持法の制定に強い遺憾の意を表明した。茂木外相は、30日発表の談話で、「香港における日本国民や日本企業などの活動や権利がこれまで同様に保護され、また香港市民の権利と自由が尊重されるよう関係国と連携して中国政府に対して求める」と述べた。
香港版国家安全維持法が可決される前日の6月29日、米国政府は、香港への防衛機器の輸出を停止すると発表した。米政権は、香港の自治が失われたことから、香港への優遇措置を見直している。
これまで、米国から香港への輸出は、信用度を高く評価され、輸出業者が特別なライセンスを申請しなければならない中国本土への輸出とは異なり、簡易な事務手続きが可能だった。しかし、米商務省は6月29日、この香港への輸出品に対する特別扱いを撤廃したと発表した。
米上院は6月1日、香港版国家安全保障法の制定・施行に関与した中国共産党幹部や機関を制裁する「香港自治法」を可決した。ポンペオ国務長官は同月29日、数人の中国共産党幹部の査証(ビザ)発給の制限という制裁を科すと発表した。
中国共産党機関紙・環球時報の胡錫進編集長は6月30日、SNSで、香港国家安全維持法で科せる最も重い処罰は、終身刑だと述べた。同法の草案を見た複数の関係者の話として伝えた。香港メディアも、同法に違反すれば「国家転覆罪」「国家分裂罪」「テロ罪」などの罪で重刑が科される可能性があると伝えている。
香港国家安全維持法の成立は、香港の「一国二制度」の無効化を意味し、香港は中国本土の都市と同等の政治システムに組み込まれることになると考えられている。この影響で、民主主義や独立を主張する団体が多く解散している。
政治団体「香港衆志(デモシスト)」の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏、羅冠聡(ネイサン・ロー)氏、周庭(アグネス・チョウ)氏が個人のSNSで、同組織から脱退することを発表した。
「香港独立聯盟」の召集人・陳家駒氏は6月28日、香港を離れたと発表した。「香港民族陣線」や「学生動源」は、香港の全メンバーを即日で辞任させ、海外支部は引き続き活動すると、それぞれSNS上で発表した。
(大紀元:翻訳編集・佐渡道世)