このような状況下、かつてない活況を呈しているのが自転車ショップだ。急増する自転車通勤などが追い風となり、人気車種は軒並み在庫切れになっているという。
自転車ブームに火がついた理由はいくつかある。
ジャカルタ特別州内に住む自転車愛好家、ヴィシュヌ・ダーマ(42)は「子どもたちもインターネットに飽きたころ。きっと自転車が目新しく見えたのでしょう」という。
だが、それだけではなさそうだ。まず近年の健康意識に対する変化が背景としてあるが、新型コロナの感染拡大を受け、混雑する公共交通機関に代わる移動の足として注目されているのだ。
「政府は身体的距離を保つよう呼びかけるが、電車・バスはすし詰め状態。クラスター感染が起きない方が不思議なくらいに」とヴィシュヌは不安を隠せない。
実店舗の様子をみてみよう。ネット通販が急伸する中、自転車はそうはいかない。それが高級車であるほど、体型に合わせた商品選びや調整が必要で、どうしてもショップに足を運ぶ必要がある。
東ジャカルタのクラマット・ジャティにあるエリコバイクショップでは、やはり大幅に販売が伸びていた。店員によれば、「特にMRT(大量高速鉄道)やトランスジャカルタに持ち込み、簡単に輪行ができる折りたたみ式の小径車の売り上げに加速度がついた」という。
当然、国内の自転車メーカーも売り上げを伸ばしている。コンタン紙によれば、ロダ・マジュ・バハギア社(RMB)のヘンドラ社長は、今年は前半の5カ月で、30万台に設定した年間販売目標を達成したという。
しかし、部品の多くは新型コロナの発生源となった中国からの供給に頼っている。「部品が予定通り届かず、生産体制の強化もできない。とても需要を満たせない」と嬉しい悲鳴を上げる。
一方、高価だが英国製のブロンプトンなど輸入フォールディングバイクにいたっては、どの店舗も次の仕入れのメドが立たない。そこで注目され始めたのが、折りたたみ式の電動バイクだ。
「混雑するバスや電車に戻りたくない。人の距離が接近するバイクタクシーもイヤ。通勤も買い物も自転車。買えないなら電動バイクに切り替えたい」。タンゲランに住むアナ・デヴィ(32)はもう心に決めたという。
どうやら、自転車への新たな関心は単なる「流行り」ではなさそうだ。(リリス・イラワティ)
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/52011.html