ベトナム:繊維・アパレル産業、新型コロナウイルスにより大打撃を被る
ベトナムの繊維・アパレル産業は、サプライチェーンが数社程度の主要パートナーのみに依存しているため、新型コロナウイルスの感染拡大により国内で最も大きな打撃を被っている。
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ベトナムは元来、生地製造能力がほとんどないアパレル製品の生産に焦点を当ててきており、生地のうち最大89%を輸入していると推定されている。その内訳は中国から55%、韓国から16%、台湾から12%、日本から6%である。米国とEUの市場は、ベトナムのアパレル製品輸出の60%以上を占めている。
ベトナムのアパレルメーカーは、バイヤーが製造前および製造後のすべてのプロセスを制御および所有する最も単純な裁断・縫製・仕上(CMT 業務)モデルに主に焦点を当てている。CMT生産はベトナムの総輸出の65%を占めているが、より高い利益率を可能にするOEMやODMなどのより高度なビジネスモデルは35%しか占めていない。
今年1月に新型コロナウイルスのパンデミックが発生した際、中国の生地メーカーは生産を停止し、ベトナムへの生地供給を混乱させた。3月には感染中心地が中国から西側諸国にシフトしたため、EUおよび米国から多くの注文がキャンセルされ、ベトナムの縫製メーカーに重大な損害を与えた。
ベトナム繊維協会は、3月にはアパレルメーカーの70%が労働者のシフトを減らしローテーションを組みはじめ、4月または5月にはさらに10%増の80%減になったと報告している。2020年6月までの業界の推定損失は5億800万米ドルに達する可能性がある。ベトナム税関のデータによると、2020年の第1四半期には、全繊維・アパレル製品の輸出入は大幅に減少したという。アパレル製品の輸出額は合計で70億3000万米ドルで、2019年と比較して前年比1.4%減、パンデミック前の予想成長率の50%を下回る34%減となった。
しかし新型コロナウイルスの壊滅的な影響にもかかわらず、パンデミックは業界を回復し前進させる方法に関するいくつかの貴重な教訓を提供する。
まず、国内の織物生産の発展を頼りに、織物やその他原材料の強靭なサプライチェーンを確立することが不可欠である。信頼できる生地の国内供給があれば、混乱が緩和され、原産地規則を課す自由貿易協定(FTA)を活用できるようになる。
たとえば、最近署名されたEU-ベトナム自由貿易協定(EVFTA)に基づく優遇関税を享受するには、ベトナムの縫製メーカーは、国内生産の生地(韓国から輸入された生地を除く)の使用を要求する生地フォワードルールを満たす必要がある。
第二に、少数の主要顧客への依存を減らすために需要ベースを多様化することが重要である。ベトナムは、FTA、特に新たに署名された環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)を活用し、新たな輸出市場を模索する必要がある。これは、業界の成長促進にも役立つ。
メーカーはまた、ベトナムの有望な国内市場にもっと注意を払い、新製品の提供を模索する必要がある。抗菌マスクと防護服の国内および国際的な需要は、パンデミックの間の効果的かつ重要な救済措置を証明している。
第三に、ベトナムのアパレルメーカーは、労働集約型のCMTモデルから、より高い利益率と外部ショックに対する制御と回復力を可能にするより資本集約型のビジネスモデルに進むために必要な投資を行うことを検討する必要がある。OEMおよびODM対応が可能な企業は、パンデミックに迅速に対応できる回復力が高く、設備が整っていることが証明されている。
TNGは、Thai Nguyen省を拠点とするOEM企業であり、2020年の第2四半期までの生産に十分な生地を備蓄している。TNGは、パキスタンおよびその他の国内サプライヤーからの代替調達も手配している。この代替え策と機敏なマネージメントにより、TNGは抗菌マスクの製造をわずか3日で開始可能となり、海外からの注文のキャンセルを受けたにもかかわらず、2019年比で65%の収益増という記録を打ち立てるのに役立った。
この深刻で一時的な後退の中であっても、ベトナムの繊維・アパレル産業は将来について前向きになるべきである。
2019年、繊維・アパレル産業への外国直接投資(FDI)の80%以上が、生地やその他原材料の製造業種にシフトした。
2019年初頭、香港に本拠を置くTALはThai Nguyen省を拠点とする3億5000万米ドルの織物工場の建設を承認された。2020年2月には、別の香港企業のTexhongが既存の5億米ドルの投資に対して、Quang Ninh省の糸・織物の生産能力を拡大するために更に5億米ドルの追加投資をした。
これらのFDI企業は、競争圧力と波及効果をもたらし、国内および国営の生地生産者のイノベーションと成長を刺激することが期待されている。
政府はまた、繊維専用工業団地の建設によりベトナムの繊維部門を支援している。そのうちの最大規模であるNam Dinh省のRang Dong繊維工業団地は、2022年からの操業が見込まれている。
新型コロナウイルスの経済的大打撃にもかかわらず、これらすべての兆候はベトナムが中国およびインドに次ぐ世界第3位の繊維・アパレル輸出国としての地位を占める正しい方向を示唆している。
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_4316.html
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