インドネシア:貧困層、急増の恐れ 最大850万人増の試算も 新型コロナ拡大で
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済の停滞で、低下しつつあった国内の貧困率が再び増加に転じる恐れが出ている。社会経済政策を研究するSMERU研究所は17日、国内の貧困層が年末までに昨年9月比で最大850万人増の計3324万人に達するとする試算を発表した。労働省によると、16日時点で約190万人が失業状態にあり、政府は矢継ぎ早に雇用対策を打ち出しているが、その内容に疑問を投げかける向きもある。
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中央統計局(BPS)が半年ごとに発表する統計では、2019年9月時点の貧困率は、統計が始まった1998年以来で最低の9・22%(=約2479万人)だった。
SMERU研究所は、今年の実質国内総生産(GDP)の伸び率が1・0%~4・2%になるとする内外エコノミストや金融機関の統計を引用。これらのデータと2019年のGDPの伸び率(5・02%=BPS調べ)の差分などを基に、今年末までの貧困層の増加数を試算した。
その結果、少なくとも130万人が貧困層に〝転落〟し、最悪の場合、貧困層は850万人増加。貧困率は12・37%(=約3324万人)に達するという。これは2011年とほぼ同水準であり、同研究所は「政府が9年間かけて行った、貧困削減の努力は無駄になる」と結論付けている。
コロナ問題による経済停滞と、それに伴う貧困層の増加というシナリオが現実味を帯びる中、政府は20日、ジャカルタ特別州の貧困層約120万世帯に対し、スンバコ(生活必需品)の配布を開始した。社会省によると、スンバコの配布は同州と共にジャボデタベック(首都圏)を構成する、西ジャワ州とバンテン州の計8地域でも予定しているという。
一方、政府が策定した失業者対策の内容を疑問視する声もある。
政府は11日、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が公約に掲げ、3月に導入を発表していた「職業準備カード」の定員を当初の年間200万人から、約20兆ルピアの予算を投じ、約600万人に引き上げた。
同カードは主に18~24歳の求職者が対象で、オンライン上での職業訓練の受講料などの名目で355万ルピアが支給される。求職者のスキルや生産性の向上を目標としている。
これに対し、経済金融開発研究所(INDEF)の研究員は地元メディアの取材に応じ、「失業者のスキル向上は、経済が正常な状態において効果が期待できるが、パンデミック(世界的大流行)時には不適切だ」と指摘。プログラム修了後の就職の保証がないことも問題視している。また、支援を必要とする人々に関するデータが不足しているとし、同プログラムを「性急な政策」と酷評している。(高地伸幸、久吉桂史)
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/51547.html
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