そのドゥテルテ、2月11日にアメリカと結んでいる『訪問米軍に関する地位協定(VFA)』を破棄するとアメリカに通告をした。
VFAはフィリピン国内での派遣されたアメリカ軍とフィリピン軍との合同軍事演習に参加する米兵の法的地位を保障するもので、1998年に結ばれた。
大統領のこの判断についてフィリピン国防相や軍関係者は、南シナ海における中国の軍事進出への歯止めが崩れると強く反対したが押し切られた。
一方、アメリカ側だがVFAの破棄通告は180日を経た後、自動的に無効になるが、失効するまでに時間があるので様子見で、トランプなどは経費が浮くなどと発言し今回の通告を重要視していない。
今回のドゥテルテの判断は、表向きは不平等な内容になっていると挙げているが、実際はドゥテルテが強力に進める『違法薬物容疑者抹殺』政策にアメリカ側が人権侵害と批判を強めていることで、それに対する苛立ちが背景にあるとされる。
直接の契機は、ドゥテルテがダヴァオ市長時代の一介の市警察署長を国家警察長官に引き上げ、違法薬物容疑者抹殺を陣頭指揮し、その勢いで2019年に上院議員に当選したドゥテルテの腰巾着といわれる人物のアメリカへの入国ヴィザが拒否されたためではないかといわれている。
これ以前にドゥテルテは人権派のアメリカ上院議員のフィリピン入国を拒否し、それに対してアメリカはフィリピン政府の違法薬物容疑者抹殺関係者を好ましからぬ人物としてリスト・アップが作られていると見られ、上院議員のヴィザ発給拒否はその一環と見られている。
国防という国にとって最重要課題を個人的な憤怒で切り捨てるなど言語道断であると批判は強いが、国民の支持率が80%の高率であるためにその専横ぶりは許容されている。
また、ドゥテルテは大統領選で資金が中国系実業家から出ている関係から、中国に対して面と向かって意見を述べられないともいわれ、中国側の利権絡みの開発資金に無抵抗な面が強いと見られている。
フィリピンはかつてアメリカの植民地となり、アメリカの州になればと思った時代もあって結び付きは強く、アキノ(母)政権時代に撤退するまでは極東最大のアメリカ空軍と海軍の基地があった。
また、アメリカに移住するのがフィリピン国民の夢であり、その数数百万人に上っている。
今回のVFA破棄通告によってフィリピンとアメリカの間に軍事同盟の空白が出来るのではなく、軍事協定は他にもいくつか結ばれており、両国の軍事協力がなくなるものではないが、中国を利する破棄通告であることは間違いない。
ソース:http://www.ph-inside.com/news/board.php?board=news01&config=&command=body&no=492