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インドネシア:問われるべき企業の責任 脱プラゴミ時代へ

 
インドネシアの女子中学生が先進諸国に向けてこう訴えたのは、今年1月のことだった。これより1週間前、ジャカルタ特別州のアニス・バスウェダン州知事は、使い捨てプラスチックバッグ(レジ袋)の利用を禁じる州知事令第142・2019に署名した。
 
禁止条例が今年7月1日から施行されると、ショッピングモールはもとより、いかなる商店もレジ袋を顧客に供給できなくなる。使えるのは環境にやさしいレジ袋に限られる。
  
条例に違反した場合、書面による訓告に始まり、最高2千5百万ルピアの罰金、さらには業務の一時停止または停止処分という厳しい罰則が科せられる。
  
この首都ジャカルタが下した決定を受け、かつてジャワ最大だった港町で育った女子中学生が立ち上がった。東ジャワ州・グレシック出身の12歳の少女、ニーナ。彼女はオーストラリアのスコット・モリソン首相に宛てた公開質問状(1月21日付け)を書き、ジャカルタのオーストラリア大使館に持ち込んだ。この中でニーナは、「先進国からのプラスチックゴミで故郷が汚されていると知り、悲しくなった。もうプラゴミを送り付けるのはやめてください」と訴えたという。
  
受け入れた経緯を振り返ろう。プラゴミの取引量が世界トップだった中国が2017年、輸入禁止令を出した。その結果、行き場を失った大量の廃棄物が豪州などの先進国から、インドネシア、ベトナム、マレーシアなどに流れ込むことになった。統計によると、オーストラリアは昨年、東ジャワを含むインドネシア全土にプラゴミ計5万2千トンを輸出している。
  
しかし、環境保護の観点から見れば、問題はそう単純ではない。
  
地元メディアによると、国内の一般ゴミの排出量は1日当たり平均で19万トン超。この大半は有機廃棄物で、プラゴミは2万5千トン。このうち20%が川や海に投棄されているという。
  
レジ袋の禁止は、確かにこれらが生む海洋汚染を食い止める一助にはなるだろう。ただ、禁止条例の対象はそれらを大量活用している産業界ではなく、個人消費者にすぎない。環境保護の観点からすると、果たしてどれだけの効果があるのか、疑わしい。
  
「ゴミの出どころとか、どこから輸入したとかを論議する時間はない。都市部の河川や沿岸部は有毒なプラゴミが山積みで、食物や人々の健康被害にまでおよんでいる。ただちに明確な行動を取らなければ、プラゴミの海洋投棄は今後5年で80万トンにまで増えるだろう」
  
ため息まじりで窮状を訴えるのはルフット・パンジャイタン海事担当調整相だ。そして力説する。「40年までに循環型経済を具現化すべき。廃プラは海や埋め立て地に投棄するのではなく、新しい資源として進化させる必要がある」。
  
異論をはさむ余地はないが、業界の声は一枚岩ではない。総論賛成、各論反対というのが現状だ。
  
ラハンタ・小売業界協会副会長は、「そもそも環境問題が関心事なら、なぜ政府は生分解性レジ袋を推奨しないのか」と、ちぐはぐな施策に疑問を投げかける。
  
ラハンタ氏は続ける。「小売業がレジ袋を止めるのは簡単なこと。提供しなければいいのだから。しかし、新条例を消費者が受け入れているか? プラゴミの危険性について消費者に十分な啓発したのか? レジ袋を禁止するなら、消費者は山のような買い物をどう持ち運ぶのか、代案を示す必要はないのか?」。 
  
行政が包括的な指針を出さなければ、問題の解決にはいたらないのではないか? ラハンタ氏はいらだちを隠せない。しかし、決してプラゴミ規制に反対しているわけではなく、ゴミ分別に焦点を充てた廃棄物管理を自治体単位で徹底すべき、という。
  
そして、「さらに重要なのは産業界で使い捨てプラスティックの使用を段階的に減らし、使い捨て可能なパッケージに詰め替え、あるいは再利用できるような新たな仕組みを考えるべきだ」と付け加えた。
  
言い換えるなら、彼ら産業界のプラスチック使用量を明確にし、製造するプラスチック包装が生む汚染に対して責任を持つべき時代が来ているのだ。
 
◇ 新企画「インドネシア人記者の目」はじゃかるた新聞のインドネシア人記者チームが担当。国内目線で見るニュースの深層、また身の回りの出来事などを掘り下げていきます。随時掲載とし、読者のみなさまが抱える疑問点なども募集します。メール(news@jkshimbun.com)まで。
 
文:アルバート・レボン 
編集:リリス・イラワテ 
写真:ピクスニオ
 
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/50983.html