「たまご、れんにゅう、あつあげ、ししゃも」。10月に来日したインドネシア人実習生アミン・ムバロクさん(28)はメモを片手に、スーパーで日本語の実践教室に参加していた。
付き添っていた小学校4年生の新美咲季さんが「店員さんいたよ」と駆け寄った。アミンさんが店員に豆腐コーナーへ案内されると、「インドネシアのタフと同じです。これ、僕の国にもあります」とほほ笑み、手に取った。
教室を主催するのは、公益社団法人「トレイディングケア」(同市)。監理団体としてインドネシア人実習生の受け入れをする傍ら、この教室を11月から始めた。この日は、ベトナム人実習生と日本人親子らも加わり、約15人が参加。分からないことを人に聞く力を育てようと、あえて難しい食品をお題にした。
「僕の日本語は大丈夫ですか、心配です」。アミンさんは話す。インドネシアで3カ月間、日本語を勉強し、日本で実習を始めた。同郷の10人と宿舎で暮らし、「ほかの人は8カ月勉強してきたので、僕より日本語が上手。すごく日本語を勉強したい」と言う。宿舎ではインドネシア語、実習先での日本語は簡単な作業説明のみ。「こういう取り組みがないと、日本語を勉強する機会がない。次回も来たい。楽しいです」とはきはきと言う。
教室はスーパーが入居する商業施設「Tポート」などの協力で実現。施設側はごみの分別の仕方を教えた。施設運営会社の尾関圭介開発課長(40)は、「スーパーとしても(外国人の)ニーズが引き出せる」と商機を感じている。老舗の同店が「地域を先導して対応していきたい」と話していた。
インドネシア人ら、外国人労働者の多い愛知県。その中でも高浜市は外国人人口が3773人(18年12月末)で、全住民の7・8%を占め、県内で最大の比率だ。トヨタ関連工場や中小企業、周辺自治体の実習先の宿舎がある。
一方、外国人と住民の接点は少なく、「支援を始めるまでは、関わることがほとんどなかった」と住民の千賀由紀さん(45)。子どもの允道君(7)と一緒に4月から実習生と関わるようになり、お互いの生活を「理解することができたかもしれない」と話す。
トレイディングケアの新美純子代表(49)は、実習生をめぐる問題の防止には、「地域での人と人のつながりが大切」と言う。元看護師で、以前はインドネシア人看護師らを受け入れる経済連携協定(EPA)の研究もしていた。
「実習生が周りから物と見られ、地域では名前も覚えてもらえない。(受け入れ先から)逃げてもいいんだ、という気持ちになる」と失踪などの問題の原因を考える。近所や外出先で外国人を見ると、声を掛けるが、「怒られるのかと思うようで驚いていることがある」。
支援を続ける中で、実習生に「どこか行ったらやだよ、さみしくなるよ」と話すと、「行くわけないじゃん、みんなに会えなくなる」と言われ、人のつながりの大切さを実感したと言う。今後について、「実習生は日本語の教育を受けていても、(暮らしのことは)知らずに来ていて、地域も困っているときがある。地域についてのオリエンテーションが必要になる」と話した。
ソース:https://www.jakartashimbun.com/free/detail/50430.html