農業の労働力が減少すれば機械化で補うしかない。農業を機械化すれば食料生産力は上がるが、農家単位では対応が困難。そこで国が支援すべきなのだが、資金を工業優先にしたことで農業の機械化は進んでいない。
日本の経験
日本は明治時代から急速に近代化を成功させた。世界恐慌が1929年に始まると、日本は世界に先駆けて世界恐慌から抜け出した。日本の急速な近代化の原因は、農業を犠牲にした近代化だった。
確かに日本は世界恐慌から抜け出したが、欧米諸国はブロック経済を採用する。ブロック経済では食料輸入が困難になり、農業を犠牲にしたことで食料生産力が低下している日本は対応できなくなった。
この状況でも日本は農業の近代化をしなかった。このまま第二次世界大戦に突入すると、アメリカ軍は日本の弱点を突く。アメリカ軍は機雷と潜水艦で日本の海上交通路を遮断した。アメリカ軍の作戦名は「飢餓作戦」であり、実際に日本は飢餓に陥った。
外国に食料を依存する中国
食料生産が不足する中国はアメリカに依存する道を選んだ。年月と資金を農業に投入すれば対応できるのだが、中国は広大な土地が有りながら外国に食料を依存する。米中が友好関係の時は良かったが、米中関係が悪化すると食料輸入に影響を与えてしまう。
戦前の日本は農業を犠牲にした近代化を選んだ。これで欧米のブロック経済に対応できなかった。だが日本と同じことが中国で繰り返されている。中国はアメリカ依存から抜け出し、他の国からの食料輸入に切り替えて対応。これはアメリカ依存からの脱却だが、本質的には致命的な弱点を抱えている。
致命的な弱点とは海上交通路を用いた食料輸入。中国はブラジル・アルゼンチン・スペイン・カナダ・イギリスなどから食料輸入を行うから、中国の生命線を海側に置いている。
戦前の日本は海上交通路をアメリカ軍に機雷と潜水艦で遮断された。この状態で中国とアメリカが戦争になれば、アメリカ軍は中国の食料輸入を遮断する。そうなれば中国は、日本と同じ様に飢餓に陥ることを意味している。
アメリカ軍は地中海・インド洋・太平洋に進出しているので、米中戦争になればアメリカ軍は中国の海上交通路を簡単に遮断できる。アメリカ軍は地中海と太平洋で活動できるが中国軍は活動できない。この差は致命的だ。
さらに豚コレラ 食害の被害が
中国は農業を犠牲にした近代化を撰んで食料生産を低下させた。中国は食料輸入で対応しているが、国内で食害が拡大したことで状況が悪化している。
中国はアフリカ豚コレラが全土に拡大。イノシシ・豚に感染する家畜伝染病だが人間には感染しない。だがイノシシ・豚の致死率は高い。悪いことにワクチンがないから対応は難しい。
アフリカ豚コレラはロシア・ベトナム・カンボジア・北朝鮮でも確認されているので、中国が隣接国から豚肉を輸入することは難しくなった。
さらにアフリカからツマジロクサヨトウが中国に侵入。中国は台湾を除けば22省だから、18省で確認されたので中国全土に拡大している。中国は食料生産力が低下しているのに、食害でさらに低下することを意味している。
これで中国はさらに海外からの食料輸入に依存する国になった。この状況でアメリカと戦争を行えば、アメリカ軍は必ず海上交通路を遮断する。これでは中国はアメリカと戦争できない。隣接国から食料輸入を求めても、アフリカ豚コレラとツマジロクサヨトウの被害で隣接国も食料が不足する可能性が高い。
中国は陸路も海路も食料輸入が難しい状況に追い込まれており、アメリカとの戦争は自殺行為になる。ロシアが中国に食料輸出するとしても、依存すればロシアに生命線を握られる。さらにロシアで食害が発生すれば輸出することもできない。
戦略が成立しない
戦略の基本から中国の置かれた状況を説明したい。戦略の中身は目的・手段・方法であり、これらが成立しなければ使えない。
海洋戦略=目的(制海権の獲得)・手段(敵艦隊+敵基地ネットワークの破壊)・方法(艦隊と基地ネットワークの造成)
制海権=艦隊+基地ネットワークの継続利用
方法は自艦隊と基地ネットワークの造成。手段は敵艦隊撃破と敵基地ネットワークの破壊になる。自艦隊が敵艦隊を撃破することで目的である制海権を獲得する。これが基本的な考え方。これを中国から見た食料に置き換えてみる。
目的:食料の獲得
手段:中国の海外輸入と輸入ネットワーク
方法:自国の食糧生産
戦略から見れば、中国は土台の方法から破綻。手段は海上交通路をアメリカに抑えられているので戦略が破砕されている。さらに食害で陸路の輸入も手段として機能低下。つまり今の中国は、アメリカと戦争するだけで国民が飢餓に陥ることを意味している。
中国が強気に出る理由は
中国が軍事的に強気に出るのは、アメリカと戦争できないことを隠すため。食料輸入の手段が外国に依存しているので、開戦と同時に手段を失う国になった。だから中国は強気に出て中国を恐れるように仕向けている。
アメリカが台湾に武器輸出を行える理由は、中国が怒っても開戦できないことを知っている。だからアメリカは台湾に武器を売れるのだ。中国はアメリカに状況を見抜かれている。つまり中国の強気は無意味なのだ。
■執筆者:
上岡 龍次(Ryuji Ueoka)
■プロフィール:
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。
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ソース:https://www.epochtimes.jp/p/2019/09/47228.html