このため毎年大量の看護師が生まれ、慢性的看護師不足に悩む日本とは違う状況かと思いきや、フィリピン国内は深刻な看護師不足に陥っている。
　
これは看護師を目指すのは海外で働くためと志望時からはっきりしていて、最初から国内で働く看護師など稀という状態から来ている。
　
特にアメリカで働きたい看護師は顕著で、アメリカの場合、フィリピンの看護師資格と共にアメリカの看護師資格を持つ必要があり、この試験は『NCLEX』と呼ばれている。
　
2018年度のフィリピン人看護師のNCLEX合格者は1万人を超え、前年の合格者7791人と比べて32％の増加を示した。
　
アメリカがフィリピン人看護師の就職先として人気なのは待遇が破格に良いことで、現在アメリカの看護師の平均月収は6300ドル弱となっている。
　
これに対してフィリピンの看護師は法律では500ドル弱と定められているが、200ドル弱から300ドル程度というのが実情で、アメリカで働けば30倍以上の収入が得られる。
　
また、中東やドイツ、イタリアといった言語の違う国にもフィリピン人看護師は多く働いているが、アメリカは英語圏のため全く心配がないこと。
　
元々アメリカにはフィリピンからの移民者が数百万人にも上り、コミュニティーがあることなど働き易い国となっている。
　
2017年と2018年の両年度で看護師試験に合格し認証された看護師数は19000人弱になるが、この間NCLEX試験に合格しアメリカの看護師資格を得たのは18000人強となっていて、他の国へ行く看護師数を勘案すると、フィリピン国内で働く看護師の確保は期待できないことが数字でも明らかになっている。
　
この看護師不足のため、2000年には国内に約1700ヶ所あった24時間緊急対応可能な私立病院が現在は半数以下になり、貧困層が頼る公立病院の医療現場も深刻な影響が出ている。
　
また、アメリカの看護師の高給に引かれて医師が看護師免許を取ってアメリカへ行くなど珍しくなく、その他放射線技師などあらゆる医療専門職の海外流出が続き、フィリピン国内の医療体制が揺らいでいる。
　
これに対して国は打開策を打ち出せずお手上げ状態となっているが、このフィリピン人の海外流出（出稼ぎ）は、あらゆる職種に渡っていて、建設業でも専門職の不足などが生じている。
　
あらゆる分野で人材の流出が続くと国内の質が落ちると指摘されているが、これら流出組からの巨額な海外送金がフィリピン経済を支え、国策として出稼ぎを奨励し、貧困から抜け出るために海外出稼ぎを目指す国民感情もあって、解決策は見いだせていない。
　
ソース：http://www.ph-inside.com/news/board.php?board=news03&config=&command=body&no=495

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