ほとんどすべての企業が指紋認証による勤怠管理を実施しているが、「指紋をスキャンしてもシステムに表示されないことがあると一部の作業員が言っていました。丸一日勤務して上司に承認されても、半日しかカウントされなかったようです」とのこと。
法律により、雇用者は各労働者の賃金手当に基づいて社会保険料を支払う必要がある。しかし実際には、「組合や労働者代表が労働者の給与明細を見たところ、多くの労働者は、他のいかなる補足賃金・手当を加味されず、単に最低賃金手当に基づいて社会保険料を支払われているにすぎない。これは社会保険料を低く抑えるためのよく使われているごまかしであり、労働者の重要なセーフティネットを否定している」と報告書は記している。
そのような劣悪な労働条件にもかかわらず、ほとんどの労働者は個人的な事情または選択により制約を受けざるを得ず、頭を下げ続けて働き続けることを決心する。
インタビューを受けた労働者の4分の1が、失業を常に恐れていると回答している。
報告書はまた、労働者はノルマ達成や給料増加のため可能な限り製品を量産しようと苦労していることから、ベトナムにおける多くの縫製労働者にとって、長時間労働が栄養問題も引き起こしている、と指摘する。ベトナムのとある工場の労働者の間では「年間休暇の売却」という概念があると報告されている。つまり、チームが週または月の生産目標を達成できなかった場合、チームリーダーは労働者に時間外労働を求め、年次休暇を会社に「売却」するよう求める。これは労働者は「自発的に」自らの年次休暇を取得していないとみなされる。
これらすべての要素が、過労、疲労、栄養失調、ストレス、病気、また治療の余裕がなく、低水準の給料を失うことを恐れ休暇を取得できない労働者を生み出している、と報告書は結論づけている。
ベトナムは世界の繊維・アパレル業界の巨大な新興国であり、約6000の繊維・衣料品製造会社を有し、うち84%が私有、15%が直接投資(FDI)、そして1%が国営である。報告書によれば、業界全体の雇用は約250万人である。
報告書曰く、ブランドはサプライチェーンにおける賃金手当を監視、是正、また信頼できるものにし、政府は労働者を保護するための計画を策定、立法、そして実行するべきである一方、人権侵害に対処する際には透明で公正でなければならない。
オーストラリアのブランドが自社でこのことを実施するのにそれほど時間はかからない。2017年にオックスファムは、オーストラリアの衣料品サプライチェーンの労働者が生活賃金を稼げるようになるには、オーストラリアで販売される平均的な衣料品の単価がわずか1%増加すれば良いことを示している。
だが今回の報告書は、洋服をオーストラリアに輸出する労働者の労働環境の貧困と現実、そして「オーストラリアのブランドがこの貧困から利益を得て、恣意的に賃金を低く抑えている実態」を示すものだ。
ブランドの反応
H&M「当社の製品を製造する人々の健康は、私たちのサステイナブル戦略の中心です(原文のまま)。大規模かつ家族経営の企業として、当社はビジネスのやり方で価値を生み出しており、サステイナビリティはすべてのビジネスオペレーションの中心です」
Big W「私たちは社内のサプライチェーンにおける労働者の健康促進に取り組んでいます。それは、労働者の環境と安全に対する期待を定義する、責任ある調達ガイドラインも含みます。また、私たちのガイドラインにおけるコンプライアンス違反を非常に真剣に受け止め、サプライヤーと協力して問題が適切に対処されるようにしています」
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_3797.html