昨年8月に成立した2019会計年度の国防権限法(NDAA)は、対米投資を審査する外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する法律「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」と、「最先端・基盤的およびその他の重要な技術」の輸出が商務省の審査を経なければならないと定めた「輸出管理改革法(ECRA)」を盛り込んだ。
ロイター通信によると、米調査会社ロジウム・グループ(Rhodium Group)の統計では、昨年8月まで中国の対米ベンチャーキャピタル(VC)投資は、最高水準の30億ドル(約3,200億円)に達した。中国の投資家は、NDAAの成立前に取引完了を狙った。
業界関係者35人がロイター通信の取材に対して、NADD成立後、中国からの投資がペースダウンしたと述べた。
中国投資家は、米政府の厳しい審査を通過するよう買収契約を見直している。しかし、外国企業による米ハイテク企業の買収に詳しい弁護士は、中国の企業や投資家による買収は「事実上、止まっている」と述べた。
米スタートアップ企業は現在、中国企業からの投資に対して慎重になった。長期間を要する審査手続きは、企業の発展を阻むと懸念しているからだという。
中国の投資家は軍事力や自国の競争力を高める重要な技術に興味を示している。CFIUSが昨年11月、米の「重要技術」に対する外国投資を金額にかかわらず、すべてCFIUSに報告する義務があると新たに規定した。この措置の対象は、人口知能(AI)、ロボット工学、物流技術などシリコンバレーの企業が得意とする分野が多く含まれている。
ロジウムはこの措置で、中国のVC取引のうちの75%が、CFIUSの審査対象になると推測する。「少なくとも10件の取引はCFIUSの審査が必要になったため、中止となった」とロイターはシリコンバレーの投資に詳しい関係者の話として報じた。
さらに、米の一部の業界関係者は、中国資本の締め出しは米のスタートアップ企業の海外進出に不利だと主張している。しかし、中国マネーの大規模な引き揚げによるシリコンバレーへの影響は限定的だとみられる。調査会社ピッチブック(Pitch Book)によると、昨年1~9月まで、米スタートアップ企業に対する世界各国の投資総額は840億ドル(約9兆1,000億円)に達し、過去最高となった。
セキュリティー専門家は、対米投資規制強化がスタートアップ企業の保護に繋がるとみている。ロジウム・グループの試算では、2000年から2017年まで、中国の対米VC投資の21%が、共産党政権の支配下にある国有企業から出ている。2018年にはこの数値が41%まで上昇したという。
(翻訳編集・張哲)
ソース:https://www.epochtimes.jp/2019/01/39107.html