カナダで逮捕されたのは、孟晩舟・最高財務責任者(CFO)。同社の創業者・任正非の娘だ。事件が起こったのは12月1日。航空機の乗り継ぎで訪れたカナダで逮捕された。米メディアなどによると、イランに対する米国の制裁措置に違反した疑いがあるという。
今回の事件後、在カナダ中国大使館は「重大な人権侵害だ」と強く抗議し、中国外交部は孟CFOの即時釈放を要求した。政府当局が強気の姿勢を見せているのに対し、中国国内は比較的冷静だ。
中国メディアの観察者網は12月6日の記事で、米国の調査会社の見解や編集者の発言として「ファーウェイは、5G分野で主導権を握るよう努力しており、米国最大のチップメーカーと競争するための準備を進めている」と報道。スマートフォン(スマホ)の出荷台数がアップルを上回っていることにも触れて「これらは、米国がファーウェイを『脅威』とみなす重要な要素になっている」と伝えた。
一方、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」では、「米国はファーウェイのトラブルを探し始めた」「米国で5Gの市場を失うことになる。通信設備で競争力を失った場合、ファーウェイはただのスマホメーカーになってしまう」と先行きを不安視する声が上がった。米中の新たな火種になるとの見方もあり、「これは戦争のリズムだ」と投稿するあるユーザーもいた。
米国と中国企業の関係では、中国の通信大手中興通訊(ZTE)の例がある。同社は今年4月、米国からの制裁を受け、一時経営危機に陥った。今度はファーウェイが制裁の対象になるのではとの観測が広がっている。ただ、ファーウェイはチップの自社開発を推進しており、米国からの制裁でチップの供給を絶たれ、経営が大きく揺らいだZTEと同じ轍を踏まない方針だ。
・各国が警戒感
今回の事件のほかにも、ファーウェイには不安要素がある。それは5Gネットワークの構築で、各国が警戒感を強めていることだ。背景には、米国の存在があるとみられている。
オーストラリアとニュージーランドは、5Gネットワークの整備でファーウェイを排除する方針をすでに決定している。このほか、さらに英国の通信大手BTも、5G関連でファーウェイ製品を使わないと表明した。
日本では12月10日、政府が「サイバーセキュリティ対策推進会議」を開催し、IT機器の調達に関する新たな方針を申し合わせた。政府機関のシステムからの情報漏えいや社会的・経済的混乱を防ぐことなどが目的で、特定企業の名指しはしていないが、複数のメディアは、ファーウェイとZTEの排除を念頭に置いた措置とみている。
菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、「サイバーセキュリティーを確保する上で、情報の窃取や破壊、情報システムの停止などの悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しないことは極めて重要」と説明した。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、米国は、日本を含む同盟国に対し、ファーウェイ製品の使用を止めるよう求めたという。各国の動向は、米国の意向を受けた対応とされている。
米国は、同盟国とともに共同戦線を張ることを目指しているとみられるが、異なる対応をとる国もある。ロイター通信によると、ドイツ政府は12月7日、5Gネットワークの構築に向け、政府調達からファーウェイを排除することを想定していないとの方針を示した。
(週刊BCN+ 齋藤秀平)
ソース:https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20181212_165506.html