従来の最低賃金は分野ごとと雇用者数で定められ、小売業とサービース業などは雇用者数10人以下が日給475ペソ、雇用者数が11人以上と農業以外の分野は512ペソとなっていた。
今回の引き上げで最低日給は500~537ペソとなったが、これに対して労働者団体側は今年に入ってから急激な物価上昇に見舞われている現状では『焼け石に水』と強く反発している。
これは当初、労働者団体側は最低賃金を決める政府機関の『国家賃金生産性委員会(NWPC)』に対して、1日当たり334ペソの賃上げを求めていた。
これに対して経営側は『根拠に欠く法外な要求』とし、『中国や韓国のように急激な賃上げは競争力を下げる』と猛反対。
結局、労働者側は現実案として100ペソに下げていた経緯があり、『ドゥテルテ大統領は労働者側ではなく経営者側に立っている』と批判を浴びせている。
この批判に対して、NWPCの委員長は『この引き上げで首都圏だけでも300万人以上が賃上げの恩恵を受け、実際の首都圏の1日当たりの平均賃金は665ペソ』と述べ、賃上げ額の正当性を計っている。
これに対して平均という統計上のからくりを使って、フィリピンの実情を知らない高給取りの言い訳との指摘がされている。
こういった声を受けて大統領府は『当面はこれで大丈夫であるが、今後の経済動向によって変化はある』と、再引き上げの可能性を示しているがその気のない『リップ・サービス』と見られている。
今回の賃上げは全国紙に公示後15日を経た後に実施されるが、首都圏の他にルソン島北部カガヤンバレー地域が20ペソ引き上げられ、320~360ペソになる。
この他、ミンドロ島やパラワン島などで構成するミマロパ地域が12~20ペソ引き上げられ283~320ペソとなる。
また、他の地域も順次賃上げが決定されるが、現在1ペソは約2.2円であり首都圏の最低賃金は日本円に直して1180円ほどで、これは日本では1時間当たりの時給額と同等で、フィリピンの経済力の現実がこの数字に表れている。
なお、政府が決めた最低賃金額だが、実際はこれ以下で働いている国内労働者は多く、この低賃金がフィリピンの海外出稼ぎ大国の原因となっていて、その悪循環はなかなか止まらない状態にある。
ソース:http://www.ph-inside.com/news/board.php?board=news02&config=&command=body&no=367