人権団体は「貿易特恵停止は労働者を傷つけるだけで軍指導者らは影響を受けない」と話す
EUはすでに、貧困国からEUへの武器や弾薬以外の輸出品すべてに無税を適用する「武器以外すべて(EBA)」貿易協定のカンボジアの特恵について再検討を始めている。これを進めるEU貿易相Cecilia Malmstrom氏は、同国のフン・セン首相が野党を弾圧して勝利した先の選挙における「嫌がらせや脅迫行為」を指摘した。
10月5日、Malmstrom氏は「ロヒンギャの人々の状況悪化とそれに対する深い懸念」によりEU本部がミャンマーの貿易特恵について再検討を考えていると述べた。EUはEBA貿易協定を見直すかどうか決定するために、10月末にミャンマーへ事実調査団を派遣する予定だという。
問題は、カンボジアやミャンマーからの数十億米ドルにも上るアパレル輸出だ。 昨年にミャンマーからEUへ輸出した10億米ドル以上の製品のうちアパレル・履物がその70%以上を占めた。この産業からの購買者である欧州のブランドには、Primark、Inditex、 Lidl、Adidasなどがある。
これと時期を同じくして、10月18日からブリュッセルで開催されるアジア欧州首脳会議にて、ミャンマーのロヒンギャ少数民族に対する残虐行為を含む東南アジアの悪化する人権状況が調査される。
「欧州は自身の価値観を訴える必要があります。しかし、この影響を受けて最初に苦しむのは紛争と無関係のアパレル産業なのです」と、駐ミャンマー欧州商工会議所のFilip Lauwerysen会頭は述べた。
スウェーデンのアパレルメーカーのH&M社は声明で、EUがいわゆる「ミャンマーにおける深刻な人権状況」に取り組む必要性に理解を示した。
しかしながら、「これは複雑な問題であり、アパレル産業の雇用に悪影響を及ぼす可能性もまた考慮に入れるべきです」と加えた。
C&A Foundationによって委託された昨年の報告書によると、ミャンマーのアパレル産業労働者の90%以上が女性であり、その多くが16歳から23歳までで、昨年にロヒンギャ民族が弾圧されたラカイン州の出身者が19%を占めた。
ミャンマー縫製業協会(MGMA)によると、同産業は国内で50万人以上を雇い、輸出品の70%がEU向けだという。「もしEUが特恵関税を停止すれば、30万人以上の若い女性たちが職を失うでしょう」とU Myint Soe会長は述べた。
EBAをめぐる論争は、軍事政権が続くミャンマーへの影響力を強めたい西側の手法をめぐる過去の議論を再燃させている。
これはまた、ミャンマー軍指導者らに対して説明責任を求める国際世論の高まりと、不安定な経済と政権移行を支援している国々の努力との間にある対立を浮き彫りにしている。
EBA撤回に反対する経営者たちは、この産業への外国の関与は事業と人権実情の改善を促進していると述べた。
EUは6月、ミャンマーの軍人と警察7人に対し渡航禁止や資産凍結などの制裁を課した。しかしながら人権活動家らは、貿易特恵の停止による軍指導者らへの影響はほとんどあるいは全くない一方で、社会的緊張をさらに高めるだろうと述べた。
「もし広域的制裁が一般市民に実害を与えるのであれば、国内における反ロヒンギャ派の感情を煽ることになるでしょう」と人権団体Fortify RightsのMatthew Smith氏は述べた。Burma Campaign UKのMark Farmaner氏は、EUによる貿易特恵再検討の可能性を「まともじゃないです」と述べた。
カンボジアでは、解党したカンボジア救国党の党員たちがフン・セン政権に対する制裁に賛成の意を述べている。
しかしながら、駐カンボジア欧州商工会議所は、カンボジアに対するEBA特恵のEUによる再検討について「深刻な懸念」をMalmstrom氏に書簡で伝えた。
商工会議所は、カンボジアにおける最近の出来事に対するEUの懸念を「理解し共感する」一方で、協定を停止することは中国の存在感が増す国や地域における同国の企業競争力や最良慣行を推進するためのEUの能力に「長期にわたる悪影響」を引き起こす可能性があると述べた。
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_3644.html