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中国Eコマース第2位の京東集団 スーパーや無人店運営でオフライン強化

 
無人スーパーや生鮮スーパー「7Fresh」(セブンフレッシュ)など、実店舗の事業を加速中で、「いつでも、どこでも、何でも買える仕組み」(京東の担当者)の実現を目指している。他社にはない自社物流網を強みに、中国で激化する競争に真っ向から挑む方針だ。
 
 
・ネット通販のビッグデータを活用
 
北京市内にある京東本社。社屋内には、「无人超市」と書かれた店舗がある。京東が手掛ける無人スーパーだ。顔認証で入店すると、店内には飲料や菓子類などが並ぶ。
 
店内を見渡しても、同様のほかの店舗との違いは見られないが、店頭に陳列する各商品の選定には、「インターネット通販のデータを活用している」と京東の蘭嘉・国際広報部シニアマネージャーは語る。
 
同社は、中国でネット通販サイト「京東商城」(JD.com)を運営している。中国の調査会社・易観によると、2018年第1四半期のBtoC向け市場では、阿里巴巴集団(アリババグループ)が運営する天猫に次いで中国第二位の規模となった。
 
同社が無人スーパーで使っているのは、JD.comの売上データだ。店舗から半径10キロ圏内を対象に分析し、人気の商品を選んで陳列。データに応じて1週間ごとに商品を入れ替えているという。
 
蘭シニアマネージャーは、「実店舗では顧客が買いたいものをいつでも揃えることが可能になり、店舗の運営効率を向上させることができる。逆に顧客にとっては、欲しいものが、欲しいタイミングで買えるようになる」と説明した。
 
ほかにも、店内の随所にITが活用されている。商品が並ぶ棚には、重さの変化を認識できるセンサーを設置。センサーと店内のカメラの両方のデータと合わせることで、店内にいる客と棚からなくなった商品を紐づけることができるという。入店時に使った顔認証での支払いが可能で、商品を手に取り、そのまま店の外に出ると、自動的に支払いが済む。
 
 
・「巨大な潜在力」
 
実店舗を手掛ける理由について、同社で小売戦略を担当する凌晨凱バイスプレジデントは、BCNの書面インタビューに対し、「実店舗は小売販売の重要なパーツで、まだ巨大な潜在力と発展空間がある」と説明した。
 
同社は16年から、JD.comでAR技術を採用し、バーチャルメーキャップやバーチャルフィッティングなどのサービスを提供。注文率を9.6%向上させ、返品率を7.5%下げることを実現した。このほか、人工知能(AI)やブロックチェーンなどの研究開発も積極的に進めている。
 
さらに、インターネット上で培ったノウハウを拡大し、実社会の小売市場で覇権の獲得を狙っている。無人スーパーのほかには、スマートフォンや家電製品などを販売する「京東之家」や、セブンフレッシュなどの店舗を展開している。無人スーパーのように、各店舗ではITで効率化を図っている。
 
セブンフレッシュでは、果物の産地や甘さ、保存方法、食べ方などを紹介するブロックチェーントレーサビリティー技術を導入した。自動的に障害を回避したり、レジに誘導したりするスマートショッピングカートもある。
 
 
・実店舗で物流網を強化
 
中国では、京東と同じくインターネット通販事業を主力とするアリババグループが、「ニューリテール」と銘打ち、実店舗網の整備を進めている。アリババと競合するのは、スマートフォンアプリ「微信」(ウィーチャット)を提供する騰訊控股(テンセント)で、京東はテンセント陣営に属する。
 
京東の最大の特徴は、中国最大規模の自社物流網を持っていることだ。同社によると、現在、500以上の倉庫を運営し、倉庫の総面積は1,100万平方メートルを超える。さらに約7,000の配送センターも抱えている。中国国内では、全人口の99%をカバーしているという。
 
同社は、各地で出店を加速させる実店舗について、物流網の強化にも役立てたい考えだ。具体的には、JD.comで注文を受け、配達員が近くの実店舗で商品をピックアップし、注文者に届けることを想定。店舗を倉庫代わりとしても活用する方針だ。
 
凌バイスプレジデントは、「小売りの概念の下では、ネット通販と実店舗は互いに補完関係にある」とし、「AIやビッグデータを使って実店舗に力を与え、かつてないほどの顧客体験を提供し、効率的な小売インフラストラクチャーを構築する」と意気込む。
 
(週刊BCN+ 齋藤秀平)
 
ソース:https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20180920_164161.html