両外相は7月に東京で会談しており、今回は2度目。「アメリカ第一主義」を唱える米トランプ政権の登場や世界の覇権国化に向けた中国の動きなどを背景に、日独関係は緊密化の機運が高まっており、河野外相は与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の院内会派会合にも出席。また、メルケル首相(CDU党首)を表敬訪問した。
両外相は日本と欧州連合(EU)が締結した経済連携協定(EPA)の早期発効に向けて努力していくことで一致した。
マース外相は同EPAについて、保護主義とユニラテラリズム(単独行動主義)に対する強力なシグナルになるとして、その意義を強調。
河野外相は「日本とドイツは第二次世界大戦を経て、戦後の自由で開かれた国際秩序の下、平和国家として発展してまいりました。今、この国際秩序が揺らぐ中、ルールに基づいた国際秩序の維持・強化のため、両国が一致して緊密に協力をしていく必要がある」との認識を表明した。
西側諸国は戦後、米国を基軸として発展してきた。だが、米国の国力が相対的に低下するとともに、自国中心主義のトランプ政権が成立したことで外交、安全保障、経済の幅広い分野でこれまで自明視されてきた枠組みが揺らぎだしている。
これに並行して中国は軍事、経済的な影響力を世界的に強化。広域経済圏構想「一帯一路(BRI)」に絡んでは資金力にものを言わせてEU加盟国や西バルカンの加盟候補国を勢力圏に取り込もうとしている。
日独外相はこれを念頭に、EU加盟を目指す西バルカン諸国の改革支援や域内協力に関する日独連携を進めるとともに、西バルカン担当大使による協議を行うことで一致した。
中国は重要なインフラ企業への出資を通してドイツへの影響力も強めようとしており、中国国有送電会社の国家電網(SGCC)は独送電網事業者50ヘルツへの資本参加を今年2度、試みた。政府は50ヘルツの過半数資本を持つ送電大手エリア・システム・オペレーターへの働きかけや、政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)を通した50ヘルツの資本取得を通してこれを阻止。
現在は外資による独企業への出資のハードルを引き上げる方向で法令改正の準備を進めている。河野外相はドイツのこうした取り組みを注意深く見守っていることを明らかにした。
「日本は価値を共有するパートナー」
両国は中国の影響力が強いアフリカへの支援でも協力を模索していく見通しだ。河野外相はCDU/CSUの会合で、アフリカの多くの国が財政的な中国依存を警戒していると述べ、米国とEU、日本がアフリカ支援を共同化することを提唱した。アフリカ諸国を先ごろ歴訪したメルケル首相も中国の融資支援に対する懸念をアフリカ諸国が持っていることを明らかにした。
中国は3~4日、北京で「中国アフリカ協力フォーラム」を開催し、総額600億ドルのアフリカ支援を打ち出した。これに対しては国外から、アフリカを借金漬けにして従属化するものだとの批判が出ている。
東アジア情勢も両国の大きな関心事だ。河野外相は東シナ海における中国の軍事的なプレゼンスの強化を、現状を一方的に変更しようとする試みだと批判。ロシアのクリミア併合に通じるものがあるとの見方を述べた。独外務省は声明のなかで、「日本はドイツと価値を共有するアジアのパートナーだ」との認識を示した。
中国は独・EUにとって経済的にアジアで最も重要な国となっている。市場規模がケタ違いで大きいためで、例えば自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループのアジア・太平洋販売台数(450万5,800台)に占める同国の割合は昨年93%に達した。
だが、技術移転強要などの知財権問題、国内市場での強い外資規制、国策に基づく有力な外国企業の買い漁りなど中国は国際経済上の問題も多い。日本は自由経済、民主主義、多国間主義といった西側の基本価値を持つうえ、中国を除くとアジアでは経済力が最も大きいことから、ドイツは連携強化に乗り出している。
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