自国市場や北米市場での成功を受けて競争力に自信を持ちだしていることが背景にある。他の地域に比べて外部企業の参入が難しいとされる欧州で中国企業が確固とした足場を築いて定着に成功すれば、大きな節目になるのは確実で、今後の動向が注目される。
中国家電大手のハイアールは今後4年間で欧州の販売、マーケティング事業に総額10億ユーロを投資する考えだ。低迷する現地市場シェアの拡大が狙いで、同地の企業の買収も模索している。ハイアール・ヨーロッパのYannick Fierling最高経営責任者(CEO)が8月30日、明らかにした。
同社は大型白物家電の世界最大手メーカーで、世界市場シェアは14.2%に上る。中国では同22%強、北米でも約20%と高い。だが、欧州は2.3%に過ぎず、低空飛行が続いている。
欧州ではミーレやボッシュなど現地メーカーに対する消費者の信頼感が高く、これがハイアールのシェア拡大の大きな障壁となっている。こうした現状を打破するために販売・マーケット活動を強化。
今後4年間の投資額を過去4年間の10倍へと拡大し、ブランドイメージの向上や英子会社フィッシャー・アンド・パイケルの強化に取り組む。また、現在8カ所にとどまる欧州拠点を19カ所へと拡大する。これまで進出してこなかった北欧や南東欧市場への参入も図る考えだ。
「欧州テレビ市場3位目指す」=TCL
中国の総合家電大手TCLは欧州のテレビ市場で2020年末までに3位を獲得する目標だ。李東生社長がロイター通信に明らかにしたもので、マーケティング費用の拡大を通して知名度を引き上げるとともに、サービスも拡充し目標を達成するとしている。
同社は世界のテレビ市場でサムスン電子、LG電子に次ぐ3位に付けているが、欧州では無名ブランドにとどまっている。
李社長は「3大市場である米国、アジア、欧州のすべてでプレゼンスを示すことは大手電機メーカーにとって極めて重要だ」と明言した。欧州市場の本格開拓に向けてポーランドのワルシャワ近郊に先ごろ、工場を開設した。
TCLは中国では洗濯機や冷蔵庫、エアコンなど幅広い分野の家電を手がけている。同社長は欧州でも取扱商品を増やしていきたいと抱負を述べた。
EVを20年に投入=奇瑞
中国自動車大手の奇瑞汽車は欧州市場に進出する計画だ。陳安寧社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に明らかにしたもので、フランクフルト近郊には開発センターを開設する。欧州に進出した中国の自動車メーカーはこれまですべて撤退しているものの、同社長は定着に自信を示した。
欧州で販売するのは昨年のフランクフルト国際モーターショー(IAA)に出展したSUV「エクシードTX」で、電気自動車(EV)モデルとなる公算が高い。価格は標準装備で約3万ユーロを想定している。
陳社長は「中国は世界最大の電動車市場であり、総合的にみて電動車の開発ですでに世界ナンバーワンだ」と明言。「欧州メーカーに対するこの経験上の強みを生かしていきたい」と語った。早ければ20年に市場投入する。
欧州開発拠点をめぐってはフランクフルト近郊のラウンハイムに設置するとの観測がある。ラウンハイムは自動車大手オペルの本社所在地リュッセルスハイムに隣接しており、自動車関係の企業や人材は豊富だ。
同社長は新拠点の開設予定地を伏せているものの、すでに独自動車業界の有力な専門スタッフを採用したことを明らかにした。奇瑞は同センターの開設を数ヵ月以内に正式決定する予定。
中国の自動車メーカーがこれまで欧州市場に定着できなかったのは、ブランドイメージが悪いほか、安全性に大きな懸念を持たれているためだ。
江鈴汽車のSUV車「陸風(Landwind)」を対象に全ドイツ自動車クラブ(ADAC)が05年に実施した安全性テストでは、「20年に及ぶクラッシュテストの歴史でこれほどひどい車はなかった」と厳しい評価が下された。
華晨中国汽車が欧州市場で発売したセダン「BS6」を対象とする07年の安全性テストでも「ドライバーが生き残るチャンスはゼロに近い」との酷評を受けており、たとえ安くても中国車の購入を検討する消費者はほとんどいないのが現状だ。
奇瑞のエクシードはこれまで、すべてのクラッシュテストに合格している。部品も独サプライヤーの製品を大量に投入しており、10年前の中国車に比べると安全性や品質は高い。
ただ、世界最大の大型白物家電メーカーであるハイアールは欧州でブランド力が弱く同地の市場開拓に苦戦している。欧州の消費者に受け入れられるためには品質だけでなくプラスアルファの要素が必要であり、その壁を超えられるかが成功のカギを握るとみられる。
ソース:https://fbc.de/sc/sc41762/