米中貿易摩擦に伴って中国の顧客を失いつつある米国の業者が販売価格を大幅に値引きしており、アジアの精製会社が格好の購入機会として利用している。
トムソン・ロイター・アイコンの出荷動向に関するデータを見ると、9月の米国産原油の韓国への輸出は少なくとも平均日量23万バレル、日本への輸出は同13万4,000バレルでいずれも過去最高を更新するとみられる。
トレーダー2人とブローカー関係者の話では、韓国と日本の精製会社にとって、米国産指標原油WTIの価格が国際的な指標の北海ブレントに比べて最大で1バレル当たり10ドル安くなっている状況がプラスに働いている。
あるシンガポールの船舶ブローカーは「彼ら(韓国と日本の精製会社)はイランからの輸入の落ち込みの穴埋め先を探す必要があり、米国から(の原油)がかなりの部分を占めつつある」と解説した。
日本と韓国は、米国が11月に発動するイラン産原油取引禁止措置を前にいち早く自主的に購入を手控えており、貿易統計に基づくと韓国は7月以降イランで積み込まれた原油を輸入していない。
もっとも韓国石油精製最大手SKエナジーの親会社SKイノベーションの広報担当者は「われわれの米国産原油購入は、純粋に価格面の有利さが理由だ」と述べた。
JXTGエネルギーの広報担当者は、イラン産原油輸入の正式な停止命令は受けていないと語った上で、「われわれは調達計画において最適な原油が何かを判断する」とだけコメントした。
<WTIの割安化>
米国の対イラン制裁発動で中東市場の原油需給が引き締まりつつある中で、アジアの精製会社は代わりに米国からの調達を探り続けてきた。
その理由として先物ブローカー会社アクシトレーダーのチーフ市場ストラテジスト、グレッグ・マッケナ氏は、WTIの北海ブレントに対する割安度合がどんどん大きくなっている点を挙げた。
WTIは、米国内の生産増と中国の買い意欲後退によって業者が新たな買い手確保を強いられていることが、価格の下げ圧力。一方北海ブレントの価格は、米国の対イラン制裁やベネズエラからの輸出急減、リビアの内戦と生産を巡る根強い不安などいくつかの供給リスクに支えられている。
マッケナ氏は、北海ブレントの供給に支障をもたらす紛争や他の要因は依然として多いと指摘した。
ただWTIの北海ブレントに対する割安化がいつまで続くかは分からない。サウジアラビアとロシアがイランの市場シェアを埋めるべく増産に向かう兆しが出ており、実現すれば北海ブレントの価格を圧迫するのは間違いない。
また米国では、パイプラインや港湾、貯蔵施設といったインフラが不十分なために需要急増で輸送のボトルネックが一段と悪化し、WTI価格を押し上げてもおかしくない。
ソース:https://www.epochtimes.jp/2018/09/36194.html