ロシア主要紙インディペンデントは最近、中央アジアにおける一帯一路プロジェクトを批判する長文記事を発表した。
記事によると、中央アジア諸国では、一帯一路プロジェクトが広がるにつれ、中国からの投資が増え、国のキャッシュフローも改善されているが、相対的に反中感情が高まっているという。各地での反中デモが増加していると報じた。
中国共産党政権による中央アジアへの支配的な態度は、キルギスタンとカザフスタンのみならず、中央アジア全体に広がっている。
この記事は、カザフスタンの社会調査の報告を引用している。 2007年、カザフ社会で中国人が「嫌い」と回答した者は18%、 2012年には33%に上昇し、2017年には46%と半数に達する勢いだ。
また、わずか10年という短期間で、反中感情が中央アジアに広がり、社会全体に浸透する一世論となっているという。
・反中国感情の高まり 背後にモスクワのサポート?
「反中感情」は当事国で内部の権力闘争と中国の賄賂を誘う道具となっている。記事によると、現在の既得権益層に対抗する勢力は、「国益を売りさばく者」と批判するために「反中カード」を使っている。
さらに、複雑なことに、この対抗勢力が「反中カード」を掲げれば掲げるほど、これを抑制するために中国側からの賄賂も増え、さらなる政治腐敗を助長しているという。記事は、今後もこの対中感情の政治利用は強まっていくと分析している。
ロシアでは政府によるメディア統制が厳しいなか、長文の一帯一路批判記事は異例だ。「インディペンデント」紙は、ロシア国家諜報組織(KGB)の元高官で富豪アレクサンドル・レベデフ氏が2010年3月に1ポンド(約140円)とタダ同然で買収した。現在は息子のエフゲニー・レベデフ氏が経営管理している。
レベデフ氏は、米国の制裁措置リストに載るロシア新興財閥アルミニウム王オルグ・デリパスカ氏のビジネスパートナーだった。ロシアは首都モスクワ市長選を控えており、レベデフ氏は今、元大統領府でプーチン大統領元側近セルゲイ・ソビャーニン氏の選挙対策本部長を務め、同氏を支えている。
・反中デモが相次ぐなか、カネをばら撒く北京
中国共産党政府が現在推し進めている、この現代シルクロード構想「一帯一路」は、インフラ関係国の経済状況に見合わない融資を高利で組み、資本や労働者さえも中国から注ぎ込み、中国式にプロジェクトを進行させているとして、評判が低下している。これまでニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストなど英語圏主要紙は「中国の債務トラップ外交」などと批判記事を展開してきた。
「債務トラップ」の犠牲となる国は、キルギスもその1つ。中国の過剰負債により、国家の主権を脅かしかねない事態となっているにもかかわらず、2018年6月に山東省青島で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で、訪中したキルギス大統領は、新たな大規模な援助と融資を受けることを発表した。
キルギスの中国大使館は2016年にテロ事件が発生した。同年、カザフスタンで大規模な反中抗議デモが起きた。カザフが新しく制定する法律には、中国人がカザフの土地を大量購入することが許可されるなどが含まれており、国民の強い反発を招いている。
また、カザフにおける反中感情は、中国のエネルギー企業とカザフ国内地方自治体が癒着し、共同で国内の石油労働者を迫害しているとの報道を受けて、さらに過熱した。
専門家は、中国の中央アジアにおける影響力の拡大は、ロシアの地域的利益を真剣に脅やかすと考えている。しかし、中央アジアの反中国感情とロシアとが具体的な関係を持っているかどうかは不明だ。
カザフ政治学者サバイエフ氏によると、ロシアもまた中央アジア諸国のすべての国と良好な関係を持っているわけではない。特に、ウクライナ危機とクリミア併合には、ロシアに対する懸念が増加した。
さらに、一帯一路構想は、ロシア主導の構想である「ユーラシア経済共同体」とほとんど相いれない。
サバイエフ氏は「中央アジアでこれら2つのプロジェクトを統合することは不可能だ。とりわけロシアの「ユーラシア経済圏」は不安定で、プロジェクト規模は小さく、将来的な期待感は低い。いっぽう、資本提供の多い中国の一帯一路が選ばれていく可能性もあると指摘した。
国際組織危機管理委員会(International Organization Crisis Club)の報告書は、中国とロシアは中央アジアの民主主義と法治主義をないがしろにしていると指摘。中国が、贈賄などを通じて中央アジアの少数の既得権益層を丸め込めることに「長けている」と同委員会は批判し、中国からの投資や融資は「極めて不透明」だと不信感をあらわにした。
また、他の外国企業も現地住民の抗議に遭うことはあるが、「反中抗議とは性質がまったく違う」と評した。
(編集・佐渡道世)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2018/08/35285-2.html