中国で「一帯一路」報道自重ぎみ 評判振るわず
61年振りに政権交代したマレーシアのマハティール政権は、ナジブ前首相と中国共産党政府が契約した、2つの一帯一路プロジェクトである計4兆円相当の鉄道計画の中止と見直しを発表した。国内の専門家から、親中ナジブ前政権のように政治腐敗と巨額負債を促すとの声が強まっていた。7月初旬にナジブ氏が逮捕されたことにより、さらに負のイメージとのつながりが色濃くなる一帯一路。中国政府は内外の情報に敏感になり、宣伝報道を抑制するようメディアに指示している。
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大紀元特集:一帯一路
中国国内メディアによると、中央政府は一帯一路に関する宣伝報道や発表を自粛している。指示では、次の2点を強調したという。1.マーシャル・プラン(米国による経済疲弊国救済計画)の中国版ではない。 2.一帯一路はイニシアチブ(構想)であり、戦略計画ではない。
この報道自粛指示は、関係国のなかで起きている懸念、例えば債務超過で現地政府機能を低下させ中国の影響力を強化する「債務トラップ外交」、また軍事圧力、現地政府の腐敗を招く金満外交など、ネガティブな論調を抑制する狙いがある。
ジャーナリスト・末永恵氏がJBプレスで5月に発表した記事によると、マハティール政権による知識者を集めた政府の評議会メンバーは、中国主導の「東海岸鉄道計画(ECRL)」について「非常にリスクが高く、しかも理にかなっていない。マレーシアにとって全く有益ではない」と、否定的な見方を示した。記事によると、マレーシア与党関係者の間では「中国政府と交渉した上、中止になる公算が高い」との見方が強いという。
中国国内の銀行も 一帯一路の先行き不安?
米ニューヨーク・タイムズは最近、中国政府は一帯一路にブレーキをかけ始めたと報じた。アジア、東ヨーロッパ、アフリカにまたがる大胆で大規模なプロジェクトに資金を注ぐため、5年かけて何千億米ドルを資金調達してきた。中国の公式発表によると、2018年1月から5月まで、中国企業は一帯一路関連事業に362億米ドル相当の契約を請け負ってきた。まだ規模は大きいが、前年同期比で6%減少した。
中国側も慎重意見が出始めている。中国人民銀行の易綱・総裁は4月、中国の金融機関は、相手の返済能力を見極め、一帯一路で国をまたいだ融資計画を組むときは慎重になるようにと発言した。
6月中旬、上海の中国金融当局の会合で、関係者からも自重ぎみな意見が出ている。中国輸出入銀行の鬍暁煉・会長は、一帯一路に注いだ莫大な投資が、短期ではなく、より長期にわたりプロジェクトの成功が見えるかどうかを問題提起した。
輸出入銀行会長は「世界の貿易と投資環境が非常に厳しい中で」と強調し、同行は56の国と1400以上の地域の一帯一路関連プロジェクトに、総額7800億元(約13兆円)を投じていると明らかにした。
6月末、香港で開かれた一帯一路サミットで登壇した、香港貿易発展局の羅康瑞氏は、この巨大構想プロジェクトに関わる国には、中国国有企業が多く投資しているが、これらの企業は「(関係国への)寄付ではないことをはっきりと自覚するべきだ」と述べた。
一帯一路で関係悪化
一帯一路の関係国は、対中国との関係悪化がみられる。冒頭のマレーシアのマハティール新政権は、同国とシンガポールを結ぶ高速鉄道計画を中止させ、東海岸鉄道計画も見直しを決めた。合わせて4兆5000億円にも及ぶ2つのプロジェクトは一帯一路の目玉事業と言われ、中国企業が建設工事を請け負う予定だった。さらに新首相は6月、初の外遊先に日本を選び、中国の影響下からの脱却をアピールした。
参考:マレーシア首相、初の外遊先は日本 脱中国の姿勢を鮮明に
米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)ジョナサン・ヒルマン研究員は、同氏の率いるアジア経済研究サイト「リコネクティング・アジア」のなかで、「スリランカの経験に関心を集めている」とした。中国資本で建設された同国コロンボ港は運営と債務返済が困難な状況で、その見返りに、スリランカは中国の地政学戦略上で要衝となるハンバントタ港の運営権を99年譲渡することを余儀なくされた。
ヒルマン氏はまた、モルディブやパキスタンなどでも、国内で中国の融資に対する懸念を表明しており、欧州の指導者たちよりも警戒心は高いとみている。
ベトナムは北部を中国と接し、国土が南北に長く、南シナ海の海上輸送や地政学戦略上の要所を複数持つ。中国の物資を運ぶために、ベトナムは巨大構想の「一路(海路)」にとって重要国だ。これと関連して、ベトナム国会は国の北部、中部、南部の3カ所に外資誘致する経済特区を設置する法案を審議している。
2014年反中デモでは死者が出るほど加熱した過去もあり、国民感情を考慮してか、今回の法案に中国の名はなかった。しかし、6月中旬「中国に土地は貸さない」といった反中スローガンを掲げた国民デモが全土で展開。国会は審議を10月に見送った。
負債トラップ外交、中国経済しっぺ返しに
国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、4月12日に北京で開かれた一帯一路サミットに出席し、一帯一路プロジェクトに関わる国には「負債が多すぎ」と計画性の不全さを警告した。
CSISのヒルマン氏は、一帯一路プロジェクトを結んだ関係国はたいてい、米ドルや中国元で契約しており、現地政府がコントロールできないため、金融リスクに脆弱(ぜいじゃく)な立場にあるとも付け加えた。
「歴史的に、金利が上昇するにつれて、貸し手は容赦なく返済を迫るようになり、借り手は焼け石に水のような返済をする、という格好になる」「しかも、それは中国経済に跳ね返ってくるかもしれない」と中国経済へのダメージにもなるとの見方を示した。
このたび、中国政府の態度が慎重に傾いたのは、米朝貿易戦の影響によるものとの見方もある。仏RFIによると、中国政治評論家・馬雲根氏は、すでに貿易戦で中国は資金を消耗しており、さらに一帯一路を推進させることは、更なる経済リスクを増長させると分析している。
(編集:大紀元・甲斐天海)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2018/07/34539.html
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