中国の都市部の多くの幼稚園や学校では、教室内には監視カメラが設置されており、専用アプリなどを使えば、どこにいても親が子供の映像を確認できるようになっている。しかし、行き過ぎた監視には、親からは反発が巻き起こっている模様。杭州のある小学校は、人工知能(AI)を駆使して、子供の表情や行動の情報を収集し、集中力に関する順位表を付けていたことが明らかになった。
銭江晩報5月15日の報道によると、杭州第十一中学校は、構内に設置したAI監視カメラによる「人工知能教室行動分析システム」を採用した。生徒たちの読書、挙手、起立、机で字を書く様子などの映像情報を分析し、生徒の「集中力」の度合いが計測される。その集中力ポイントは、専用ディスプレイに表示され、教師が確認しているという。
AI監視カメラにより、生徒たちの喜怒哀楽の表情もとらえ、感情情報も収集している。また、出欠席も記録でき、始業チャイムがなった後わずか1分で、出欠席を判定したという。
生徒の一挙手一投足を記録するAI監視について、親たちは、子供のプライバシーの侵害だと主張した。ネットユーザたちは「刑務所にいるようだ、人間はこんなに愚かなのか?」「子供たちは国の発展のため(注:皮肉って)実験台になっている」と批判した。「これは教育に真剣に取り組んでいない形式主義の表れだ」とあるユーザは鋭く指摘した。
5月18日、同中学校の事務所はラジオ・フリー・アジアの取材に対して、監視機器は杭州のIT企業が無償提供したものだと語った。
中国の幼稚園や小学校には、親や保護者にとって監視カメラは「なくてはならない」ものとしての認識もある。中国インターネットには、しばしば小学校や幼稚園での構内での教職員らによる児童虐待が映る監視カメラ映像が出回る。いっぽう、こうしたネット映像は学校運営サイドが自主的に公開することはなく、多くは流出映像だ。親たちが抗議しても、監視カメラの映像が運営側から公開されることは極めて少ない。
北京の高級幼稚園・紅黄藍幼稚園では2017年11月、教員らによる性虐待と薬物注射疑惑が持ち上がった。親たちは監視カメラの映像公開を要求し、検察による運営会社の刑事責任追及を求めたが、検察側は「親が事件をでっちあげた」として捜査を打ち切った。幼稚園の運営会社は人民解放軍高官親族が創業し、また筆頭株主だった。
人権団体「中国人権観察」の劉興聯・事務局長は、ラジオ・フリー・アジアに対して、監視システムは人々の抑圧のために利用していると述べた。「杭州でも新疆でも、大規模な監視網が全国的に実施されている。中国人にプライバシーはない。尊厳と人権が踏みにじられている」
共産党体制下で、中国は超監視社会となっており、AI技術も加わってハイテク監視のシステムが拡大している。道路や街中、駅などには、のべ数千万台の監視カメラが設置され、誰がどこにいるのか、公安当局は一瞬で把握できる。北京など一部地域の警察官は、個人情報を瞬時に確認できるAIメガネ「スマートグラス」を装着している。
AIで収集された個人情報は「天網」と呼ばれるビッグデータで管理されており、ポイント制の個人信用度に影響する。たとえば、喫煙禁止区域での喫煙や信号無視などのルール違反でさえ個人信用度は低下する。
信用ポイントの低さに応じて、融資や住宅購入の制限、鉄道の切符や航空券の購入規制、就職先の限定、また信用度の低い親の子供の就学先が制限されるなど、対象者と家族の人生においてあらゆるペナルティが科される。5月16日、発展改革委員会のスポークスマンは、4月までに1114万人の航空券、425万人の鉄道切符の購入を制限したと発表した。
(翻訳編集・佐渡道世)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2018/05/33395.html