リバティ・グローバルから同4カ国の事業を総額184億ユーロで譲り受ける。そのうち108億ユーロを現金支払い、残り76億ユーロを債務の引き受けが占める。取引の成立には独禁当局の承認が必要。
ボーダフォンは2014年、CATV独最大手のカーベル・ドイチュラント(KD)を107億ユーロで買収し、同国のCATV市場に参入した。ユニティ・メディアを買収すると、これまで進出していなかったバーデン・ヴュルテンベルク、ヘッセン、ノルトライン・ヴェストファーレンの3州でケーブル通信網を獲得。独16州すべてでケーブル通信網を運営する事業者となる。
今後は22年までの4年間に総額120億ユーロをドイツに投資し、ギガビット級の高速通信サービスを国内の2,500万世帯、5,000万人が利用できるようにする考えだ。これにより競合もギガ通信網の構築を加速するようになることから、顧客の消費者、企業にとって通信事業者の選択肢が増え、競争の活発化につながるとしている。
ドイツでは最寄りの基地局と利用者の建物を結ぶ通信回線の最末端区間(ラストワンマイル)で圧倒的なシェアを持つドイツテレコムが光通信網の構築を長年、見合わせてきたことから、高速通信を利用できる地域が限られている。この状況はすべての機器がネットワークでつながるモノのインターネット(IoT)の普及の障害となることから、3月に成立した第4次メルケル政権は光通信網を25年までに全国に普及させる方針を打ち出した。ボーダフォンは、ユニティ・メディアの買収は同政策の実現に貢献するものだと強調している。
だが、今回の買収に対しては独禁法上の懸念が大きい。高速通信分野で競争が活発化する効果が期待できるものの、ケーブルテレビを利用したテレビ放映の分野ではボーダフォンに対するテレビ局の依存がこれまで以上に強まる恐れがあるためだ。
ドイツテレコムのティム・ヘットゲス社長は今回の買収計画が表面化した2月の時点で、当局が仮に承認するとすれば「独禁法上のスキャンダルだ」と述べ、けん制していた。同社はこれまで、既存の銅線ケーブルを活用する「ベクタリング」という技術を軸に通信速度を引き上げる戦略を採用してきた。だが同技術の通信速度は光通信の10分の1以下にとどまることから、ボーダフォンが光通信網の拡大に本腰を入れると対抗できなくなるのは確実で、戦略の抜本見直しが避けられなくなる。
複占の恐れも
ドイツテレコム以外の通信事業者も警戒感を示している。光通信サービス事業者の業界団体Buglasは、ボーダフォンは買収に伴う規模の効果で光通信料金を引き下げることができると指摘。それは消費者にメリットをもたらすものの、規模の小さい競合はその影響で光通信網を拡大することが極めて難しくなるとの見方を示した。
消費者保護団体はドイツテレコムとボーダフォンとの競争が活発化することを歓迎する一方で、他の通信事業者が競争に取り残され将来的に両社の複占体制が成立する可能性を懸念。ボーダフォンの買収計画を承認する場合は、競合による同社通信網の利用を認めることを条件とすべきだとしている。
ボーダフォンは同買収計画の独禁審査をドイツ連邦カルテル庁でなく、欧州連合(EU)の欧州委員会に申請する意向を表明した。独カルテル庁はCATV分野の合併計画を承認しなかったことが過去に数度あることから、同社は同庁を回避する考えのようだ。
ボーダフォンがユニティ・メディアを買収すると、ドイツの顧客数は移動通信で3,100万人、ブロードバンド通信で700万人、CATVで1,400万世帯となり、同売上高は130億ユーロへと拡大することになる(17年実績に基づく計算)。
※画像出典元:https://www.vodafone.com/content/index.html
ソース:http://fbc.de/sc/sc41295/