日系ITベンダーが、中国に大挙して進出しだしたのは2000年代。当時は現地の人件費が低かった。そのため、地場企業と比べて日系は相対的に給与水準が高く、現地人材にとっても魅力の就職先だった。
しかし、環境は一変した。北京や上海などの沿岸部主要都市では、人件費が大幅に高騰。大手インターネット企業のBAT(百度、アリババ、テンセント)を筆頭に、地場のIT企業も急速に成長した。ここ数年は、AIやIoTなどの先端ITを活用したスタートアップも爆発的な勢いで増加。日系ITベンダーの待遇面での相対的な優位性は完全に失われた。一部の地場大手では、給与倍増などの好待遇を餌にして、外資からの人材引き抜きを推進している状況だ。
日系ベンダーの人気は凋落した。とくに、低コストが大前提となるオフショアビジネスを主業としている場合は、現地人材の立場からすれば待遇向上が期待しにくいとあって、人が集まらない。
「日系企業のなかで、現地スタッフが辞めなくなってきている」との見方も出てきた。ジョブホッピングの考え方が主流の中国では、2~3年での転職が一般的。日系企業に務める現地人材の場合、日本語が話せるという強みを生かして同じ日系に転職するケースが多い。これに対して、ベンダー各社は、人員定着に向けた努力を重ねてきた。その結果、流動率が低下。離職者が減ったのはよいものの、求職者が増えないため、新規採用がしにくくなった。実際、約50人の従業員を抱える日系SIerでは、17年の退職者がゼロだった。
人員の補充はもはや容易ではない。ある日系SIerの総経理は、「中国のITベンダーがどんどん力をつけている環境下で、IT人材にとって、当社で働く意義を深く考えていく必要がある」と話した。
(週刊BCN+ 真鍋 武)
ソース:https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20180322_161418.html