2018年3月20日

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第4次メルケル政権がようやく成立 内政外政ともに問題は山積み

第4次メルケル政権がようやく成立  内政外政ともに問題は山積み

ドイツの独中道左派の社会民主党(SPD)は4日、中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)との連立政権樹立の是非を問う党員投票で66.02%が賛成票を投じたと発表した。CDU/CSUはすでに承認手続きを完了しており、第4次メルケル政権は14日の連邦議会(下院)で発足する予定だ。

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昨年9月の選挙からほぼ半年続いた政治の空白にようやく終止符が打たれることになる。メルケル首相を首班とする二大政党CDU/CSUとSPDの大連立政権は2期連続で3度目。
  
SPDの党員投票では2月中旬に締結された政権協定の是非が問われた。CDU/CSUとの連立継続に対しては党内左派と青年組織「青年社会主義者(JUSO)」を中心に批判が根強く、投票結果はふたを開けてみないと分からない状況だった。
 
そうしたなかで党員のほぼ3分の2が承認した背景には、不承認を受けて議会が解散・再選挙となった場合は、SPDの得票率が昨年9月の20.5%から一段と落ち込む恐れが高かったという事情がある。世論調査機関ヴァーレンの最新の有権者アンケート調査ではSPDの支持率が前回の19%から17%へと下落し、移民排斥を掲げる新興極右「ドイツのための選択肢(AfD)」(同14%)との差が3ポイントまで縮小。選挙でAfDに抜かれる可能性を排除できない状況となっていた。SPD支持者の61%がCSU/CSUとの大連立継続を支持していたこともあり、党員の一部は心の中では反対しながらも新政権への参加に賛成票を投じたとみられる。
 
政治空白の長期化を受けてドイツは重要な課題が山積している。内政ではディーゼル車の走行禁止を認めた先月下旬の最高裁判決への対応を急ぐ必要がある。外交では欧州連合(EU)改革が独新政権の発足待ち状態となっている。米トランプ政権が打ち出した輸入関税政策への対策も重要だ。
  
欧州委員会のピエール・モスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税担当)は今回の党員投票結果発表を受けて「ドイツは強い欧州の実現に向けてようやく動けるようになった」と歓迎の意を表明。フランスのマクロン大統領は「フランスとドイツは今後数週間、欧州プロジェクトの前進に向けた新たな取り組みを共同で行う」と述べ、EU改革で独仏がイニシアチブを取ることに意欲を示した。
 
 
“プロフィール”鮮明化が課題に
 
SPDの得票率は9月の選挙で、前回(13年)の25.7%から5.2ポイント下落し、戦後最低を更新した。マルティン・シュルツ党首(当時)はこれを受けて、即座に下野方針を表明したが、その時の表情は笑顔に満ちており、敗北者に似つかわしくなかった。
 
背景にはSPDの“プロフィール喪失”がある。ここで言うプロフィールは輪郭、個性という意味であり、つまりは「社民党らしさ」が弱まっているのである。
  
背景には時代の変化がある。一つは戦後の最大の支持基盤であった産業労働者層が60年代半ばをピークに縮小へと転じたことだ。これを受けて新たな支持層の開拓をそれまで以上に強化しなければならなくなったものの、ドイツ社会は時代とともに多様化しており、有権者の幅広い利害を統合するのは容易でない。
 
少子高齢化と世界的な経済競争の激化を受けて2000年代前半にSPDのシュレーダー首相(当時)が規制緩和や福祉削減の構造改革を実施したことも現在に至るまで尾を引いている。「弱者の味方」であるはずの社民党が「弱者に痛みをもたらす」経済的な“右傾化”政策を行ったためで、SPD左派の一部は離党。旧東ドイツの独裁政党である社会主義統一党(SED)の後継政党(PDS)と合併し急進左派の左翼党を結成した。
 
一方、中道右派政党であるCDU/CSUは冷戦の終結などを受けて保守色を弱め“左傾化”。その傾向は特にメルケル氏がCDUの党首となった2000年代に入って加速した。
 
CDU/CSUとSPDの政策の相違が小さくなったことは、大連立政権のハードル低下につながった。両党とも妥協のポイントを探り出す能力に長けていることから、政権運営はCDU/CSUが自由民主党(FDP)と樹立した第3次メルケル政権(09~13年)よりもスムーズだった。
 
だが、SPDは政権運営に不可欠な妥協を重ねるなかで、CDU/CSUとの違いを鮮明に打ち出せなくなり、これが同党の支持率低下につながっている。
 
連邦議会選挙でのSPDの得票率をみると、シュレーダー政権が誕生した1998年には40.9%に上っていた。だが、その後は低下傾向が続いており、19年後の昨年には20.5%へと半減した。
 
CDU/CSUとの連立を継続すると支持率低下は一段と強まる恐れがあることから、SPDは昨年9月の選挙戦敗北を受けて下野方針を打ち出した。野党であれば妥協の必要がなく、社民色を有権者に強くアピールできるためだ。
 
こうした思惑はCDU/CSUとFDP、緑の党の政権樹立に向けた予備交渉がとん挫したことで、あっさりと潰えた。SPDは今後3年半、連立を継続しながらプロフィールを再構築するという難しい課題に取り組むことになる。
 
同じことはCDU/CSUにも当てはまる。左傾化してリベラル色を強めた結果、保守派の不満が高まっているうえ、難民の大量受け入れを受けて支持基盤の一部をAfDに掘り崩されているためだ。CDUは国内外の情勢変化を踏まえ、2007年に作成した党綱領を見直すことを2月下旬の党大会で決議した。
 
次期政権ではSPDもCDU/CSUも独自色をこれまでより強く打ち出そうとすることから、対立の局面が増えると予想される。
 
ソース:http://fbc.de/sc/sc41016/

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