シンガポールに本社を置く同業のブロードコムは2月下旬、無線通信最大手でもあるクアルコアに対して、1株当たり79ドル、総額1170億ドルを提示し買収交渉を行った。クアルコム側は、これまでの買収提示額と同じく低すぎると主張し、買収に難色を示していた。
世界各国通信企業は2020年、超高速・大容量・多接続・低遅延などの特徴を持つ通信を実現する5Gの商用化を目指している。クアルコムは5Gの規格や特許の開発をリードする米通信企業のなかでもリーダー的な存在だ。
CFIUSは、クアルコムを買収後、中国当局が世界の5G通信規格標準化プロセスにおいて、主導権を持つことを警戒している。このため、CFIUSはクアルコムに対して、審査結果が出るまで、買収案をテーマとする株主総会開催の延期を要請した。
これを受けて、クアルコムは3月6日に行う予定だった株主総会を4月5日に延期した。株主宛の通知とともに、CFIUSの声明文が同封されたという。
中国当局は5日の全国人民代表大会(全人代)会議で、経済発展の新たな原動力として、製造業の振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」の推進を強調したばかり。当局は、5G 産業への全面的サポートを明言した。
CFIUSは同声明文で、5Gの技術分野で中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の急成長に対して強い懸念を示した。
CFIUSは、ブロードコムの買収案について、私募ファンドから資金を調達する手法を疑問視した。買収が成立すれば、クアルコムの研究開発などへの長期投資が減らされ、イノベーション向上ができなくなる恐れがあり、クアルコムが弱体化するだろうとした。その隙に、中国当局が5G 標準化プロセスに強い影響力を発揮する可能性が高いと指摘した。
当局は「ファーウェイなどの中国通信企業による国家安全保障上のリスクを考慮した上、同買収案によって、5G主導権が中国側に渡る可能性があり、米国の安全保障にマイナスの影響を与えるだろう」との認識を示した。
クアルコムは民間の通信インフラだけではなく、米国防省の機密プロジェクトなどにも通信サービスを提供している。
米通信技術企業、インターデジタルが17年初めに発表した調査によると、5G特許の開発に関して、これまでクアルコムが168件、米同業インテルが103件。しかし、中国のファーウェイは234件で、世界1位となった。主因は、ファーウェイは5G 技術の研究開発に投資を拡大し続けているためだ。
(翻訳編集・張哲)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2018/03/31734.html