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世界最大のアパレルメーカーは、ロボットによる労働力の転換には懐疑的?

  
Crystal GroupのAndrew Lo CEOは、中国をはじめとする世界での人件費の上昇から、ロボットによりアパレル製品の縫製など反復的な作業を行うべく、自動化のための研究開発に投資するだろうと思われるかもしれないが、実際はそうではないと話す。Financial Timesとのインタビューに対し、Loはハイテク縫製ロボットは「興味深く」、実際ロボットによる縫製に転換する企業もあるだろうとしつつ、短期的には人間による作業にコスト面で勝つことはできないだろうと述べた。Crystal Groupはアジアでも最も人件費が安く縫製産業の発達しているバングラデシュとベトナムで、これから毎年、10%程度労働者を増やすことを計画している。現在、同社の売り上げのおよそ3分の2はバングラデシュ、ベトナム、カンボジア、スリランカで生産されている。今も縫製業で世界を主導する中国での生産コストの上昇によりこれら諸国は縫製企業にとってより魅力的な生産国となっている。
 
専門家らは縫製産業における自動化の影響を注意深く見守っている。縫製産業は、しばしば搾取的だったり危険だったりするものの、アジアやその他の地域で数百万の非熟練労働者にとって命綱となっている。国際労働機関(ILO)は2016年、今後数十年の間に、ロボットがインドネシアやベトナム、カンボジアの繊維、縫製、製靴労働者の大多数の職を奪うことになるだろうと警告した。こうした労働者らがより良い仕事に就くためには、政府や企業が彼らの技能を向上させるための訓練を早急に始めなければならない。少なくとも今のところ、Crystal Groupは人間の職をロボットに代行させることはない。その理由の一つとしては、他産業で使われるロボットは金属シートやプラスチックなど堅牢な素材は扱えるものの、縫製中に伸びたり歪んだりする、柔らかく伸縮性のある布地などはまだ扱えないということがある。「ロボットには柔らかい素材を扱うことは非常に難しい」とLoは話す。
 
この問題を解決できたと考える企業は数社しかない。Sewboでは生地を作業時は硬く、その後熱湯ですすぐと元に戻るように加工している。SoftWear Automationは機械で縫製時の生地の伸びや歪みをその場で調整できるよう、ロボット技術を活用した作業テーブルを開発した。SoftWearはこうした機械のひとつは、1時間あたり、従来の方式で作業する人間17人分に相当するTシャツを製造することができるとしている。
 
しかし、SoftWearのPalaniswamy Rajan社長はFinancial Timesに対し、同社のロボットはバングラデシュの人件費より価格面で有利になることはないと認めた。SoftWearの技術の当初の目的は、人件費がずっと高い米国でより安価に衣類を製造することであった。輸送費や関税、納品までの時間を考慮すると、現在でも米国で生産する場合はロボットが最善の方法だとRajanは述べた。
 
しかし現在のところ、多くのブランドが人力で製造するアジア諸国での生産を継続することになりそうだ。
 
Photo by untitled exhibitions on Flickr
 
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_3200.html