寧夏リージョンは、中国の法規制に準拠するため、寧夏西雲がサービスの運営・提供を担い、AWSは技術支援を担当する。「AWS operated by NDWC」として提供し、ユーザーの契約先は寧夏西雲となる。同社は2015年に設立したIT企業で、17年4月にクラウドサービスの提供に必要なライセンスを取得している。
中国では、外資企業が単独でクラウド事業を展開することはできない。そこでAWSは、14年に北京光環新網科技(光環新網=Sinnet)と提携して中国初となる「北京リージョン」の提供を開始。16年7月に提携の枠組みを変更し、光環新網が運営・提供を一手に担い、AWSは後方支援を担当するモデルとなった。今年11月には、法規制の強化に対応するため、光環新網がAWS中国法人からクラウド事業の一部インフラ資産を最大20億元で買い取ると発表した。今回の寧夏リージョンの開設によって、AWSは中国での新たな運営パートナーが加わったことになる。
調査会社IDC中国によれば、17年上半期の中国パブリッククラウド(IaaS)市場のシェア上位5社は、アリババ(47.6%)、テンセント(9.6%)、キングソフト(6.5%)、中国電信(6.0%)、UCloud(5.5%)。中国では後発のAWSは、「その他」の分類に甘んじており、新リージョン開設で巻き返しを図る。北京リージョンはすでに数万社の導入実績をもち、レノボやサムスン電子などの既存顧客は、寧夏リージョンを利用する意向を示している。
中国でAWSの導入コンサルティングを手がけるITベンダーの幹部は、「ようやく中国に二つのリージョンが開設されて体制が整った」と寧夏リージョンを高評価。一方で、「サービス内容が予想よりも限定されていて残念」「中国系のクラウドは、需要が大きい動画配信向けの機能に強いが、AWSはその部分が強化されていない」との声もある。また、寧夏リージョンは、サービスによっては北京よりも10~40%低価格だが、「そもそも阿里雲などの競合と比べて価格は高く、多少の値下げでは価格競争力をもつことはできない」という見方もある。
二つのリージョンは運営事業者が異なるものの、ユーザーはAWS中国のアカウント上からそれぞれを選択でき、発票(領収書)も個別に発行される。日系SIerの担当者は、「中国独特の法規制に対応するうえで、ユーザーの利便性を損なわない仕様にした点は評価に値する」と語った。
(週刊BCN+ 真鍋 武)
ソース:https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20180110_160269.html