ブラジル各地で相互扶助、慈悲、といったコンセプトの活動が増え、注目が集まる。クリスマスには巨額の贈収賄で収監されている政治犯でさえも家族への面会、差し入れなどの面で恩恵を受けられることがある。
そんなクリスマス時期のブラジルで、チャリティムードから一気に現実に引き戻される調査報告書のニュースが発表された。
グローボ系ニュースサイト「G1」が12月14日で伝えたところによると、同日、ブラジルを含む世界の富の集中に関する報告書「World Inequality Report 2018」の完成が発表されたという。
調査にあたったのは「21世紀の資本」の著者でもあるトマ・ピケティを含む世界不平等研究所(The World Inequality Lab)。報告書自体は2018年5月14日発売予定とのことだ。
調査対象期間は2001年から2015年までで、ブラジルを含む世界各国を調査している。ご存じの通り、ブラジルは世界でも指折りの貧富の差が激しい国だ。
以下、ブラジルに特化して報告書の概要を見ていく。
2015年段階での富の保有状況を基準にブラジルの全国民をピラミッド化した場合、頂点にいる1%の国民が国全体の財産の28%を所有していることが分かった。2001年では25%で、富の集中が進んでいることが見て取れる。
同年のデータではブラジル総人口の50%(約7100万人)は貧困層に分類されるが、超富裕層はたった1%、140万人だ。
また上位10%の富裕層まで入れると富の集中度は上がり、2001年の54%から2015年には55%に達したという。
ちなみに人口の10%の富裕層が占める国の富の割合が高い国・地域の順位は下記の通り。
1.中東 61%
2.インド 55%
2.ブラジル 55%
4.サハラ以南のアフリカ 54%
5.北米(カナダ・アメリカ合衆国) 47%
6.ロシア 46%
7.中国 41%
8.ヨーロッパ 37%
ブラジルでは2001年~2015年の間に貧困層の所得は12%増加した。超富裕層の所得上昇率10%を上回っているものの、金額に換算するとそのインパクトは相当に異なる。
一方で同時期の中間層の富の保有率は34%から32%に下がった。報告書によると、この層に対する所得の分配率が下がったことと、中間層に属する人口が減少したことが要因とのことだ。
「私どもの調査の結果を見る限りでは、給与所得の格差は縮まっているものの、縮小度合いはまだまだ不十分で、元々恵まれている人たちへの富の集中が緩和されているとは言い難い状態です」(調査報告書より)
この格差をふまえてブラジルのチャリティイベントを見た時、「免罪符」という言葉が浮かぶのは単なる偶然だろうか。
とはいっても、クリスマス時期の一瞬とはいえ、富裕層の間に起こる、富を少しでも還元しようという機運は逃すべきではないだろう。
(文/原田 侑、写真上/Divulgação、写真下/Tânia Rêgo/Agência Brasil)
写真上はリオでジャネイロ市サンコンラード地区でリオ五輪後に公開された高級マンション。写真下は2015年5月、リオデジャネイロ市メトロマンゲイラ地区。再開発のため市によって撤去された貧民街の住居
ソース:http://megabrasil.jp/20171225_38012/
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