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ブラジルのクレジットカード金利、9月に65ポイント下落

 
市民の生活と密接でありながら、高金利の代表格だったクレジットカード金利も徐々に下がりつつあるようだ。
 
グローボ系ニュースサイト「G1」が10月27日づけで伝えたところによると、ブラジル中央銀行がクレジットカード金利が8月から9月にかけて65ポイント低下し、年332.4%になったと発表したという。
 
下がったとはいえ、1年後、金利だけで買い物した額の2.3倍になるという計算だ。日本の感覚ではありえない高金利だが、昨年10月の457.21%と比べると100%以上下がったことになる。
 
2017年9月の年率332.4%は2015年1月の326.7%の水準に近付いたことになるが、今回の金利低下の要因は2017年4月に施行されたクレジットカード金利の適正化に関する新たな法規制が大きいとみられる。
 
新規制は高金利によりカード債務が雪だるま式に増えて自己破産者が続出したことを鑑みて制定された。旧制度ではクレジットカードでの買い物額のうち、支払期日に払えなかった部分は金利の高い一時融資扱いとなる。残高を払いきらない限り年300%以上の超高金利での融資が続くことになり、カード支払い額が雪だるま式に増える原因となっていた。
 
ブラジルにも日本と同様、比較低金利だが事前審査が厳しい、固定元本・返済期限付貸付もあれば、審査は甘いが金利が高い一時融資がある。ルセフ政権下の消費喚起策の一環として行われていた中・低所得者層への信用拡大のもと、一時融資のメリット・デメリットを十分理解せずカードでの買い物を増やし、金利の高い一時融資額を増やしていった消費者が多かったことも自己破産者が増えた一つの要因と言われている。
 
2017年4月に発効した新規制によると、カード利用者は最初の支払期限到来から30日以内に代金を一括払いするか、分割払いにするか、また、分割の場合は分割回数も決定し、カード会社(ブラジルでは銀行がカードを発行していることがほとんどなので実質的には銀行)に通知する。カード会社はカード利用者からの分割払い(回数はカード会社によって異なる)申告に基づき、元本固定融資の分割返済と同様の、より金利の低い融資の分割返済に切り替えることになる。
 
よって、300%超の一時融資金利は、最初の支払期限到来日から最大30日間にのみ適用されることになる。そのあとは固定元本の有期分割返済融資として、各カード会社規定の範囲内で本人が申告した回数の分割返済に切り替わる。翌月に購入した商品の代金も分割払いにしたい場合はカード会社にその都度分割回数などを通知する必要がある。その場合は追加借り入れとなるため、当然利息負担も増大する。
 
9月の金利低下によりクレジットカード金利はシェッキ・エスペシアウ(金融機関の個人向け融資の一種で、日本の口座借越に類似した一時融資の一種)の平均金利である年率321%に近付いたことになる。ちなみに8月のシェッキ・エスペシアウの平均金利は年317%だった。
 
下がったとはいえ、クレジットカードもシェッキ・エスペシアウも人を破産に追い込むだけの破壊力のある高利貸しであることに変わりはない。緊迫度最高レベルの緊急事態にのみ使用し、かつすぐに返済する超短期の資金調達手段とすべきだ、と、専門家は口をそろえて言う。
 
中央銀行によると、クレジットカードおよびシェッキ・エスペシアウだけでなく、無担保貸付の平均利率も下がりつつあるとのことだ。9月の個人向け無担保貸付平均金利は年率59.2%で、8月から3.1ポイント下がっている。
 
法人・個人を含めた貸付の平均利率も8月の年率45.6%から9月には43.3%に下がった。一方法人向けの無担保貸付は8月の年率24.3%から9月には23.3%に1.1ポイント下がった。
 
貸付利率の低下は銀行スプレッド(利ざや)の縮小も招いている。平均の銀行スプレッドは昨年10月から11.5ポイント、9月だけで2.7ポイント下がり、年率50.7%となった。下がったとはいえ、他国から見るとべらぼうに高い。
 
スプレッドの計算根拠に含まれるのは銀行の利益、債務不履行リスク、資金調達費用、事業運営費用、中央銀行預け入れることが義務付けられている固定預金、税金等だ。金利スプレッドだけを見ても、ブラジル経済が高コスト構造を抱えていることがよくわかる。
 
一方、無担保貸付額のうち、回収不能となったデフォルト率は、中央銀行の発表によると、8月の5.6%から9月には5.4%に下がった。うち個人向け貸付は8月には5.7%だったが、9月には5.6%に下落、企業向けは8月の5.5%から9月には5.2%にまで下がった。裏を返せば、個人でも法人でも95%近くの債務者がこの高金利をまじめに払い続けているということでもある。外国の金融機関にとっては非常に魅力的なマーケットに映ることだろう。
 
中央銀行は今後政策金利をもう少し下げる見込みであることから、銀行が市中貸付金利をさらに引き下げる余地はあるという。とはいえ、政策金利に50%のスプレッドを乗せないと維持できない金融機関の高コスト体質が政府の低金利政策の恩恵を薄めていることは否めない。銀行側も早期退職制度等で人員削減を行うなど、コスト削減に乗り出してはいるものの、抜本的な対策を打ち出すには至っていない。
 
世界の金融界に切り込んできたIT、通信系企業による金融技術(フィンテック)開発・普及に伴い、海外では銀行の収益源、利ザヤはどんどん縮小している。一方、ブラジルでは2017年8月に中央銀行がフィンテックベンチャーによる貸付に関する法制の提案を行ってはいるものの、フィンテック投資拡大など、フィンテック自体を積極的に推進するような国内大手金融機関の動きは今のところみられない。
 
「高金利」は、払うものにとっては大きな負担だが、銀行に資金を提供する「持てる者」にとっては「不労所得」の源泉であり、ブラジルの富裕層を支える構造の一部となってきた。金利の低下はその構造を崩すことであるため、金利ディスカウンターとなりうるフィンテックの導入・推進については政界・財界の抵抗も根強いと思われる。
 
そんな中で台頭してきた「ギアボウソ」など、融資マッチングサービスとそこに投資をする外資フィンテックファンド。この潮流がどこまで拡大できて金利低下を実現させるは不透明だが、これらの新技術・サービスの普及で事業家たちが高金利から解放された時、ブラジル経済は新しいフェーズに入っていくものと思われる。
 
(文/原田 侑、写真/Marcos Santos/USP Imagens cartao de credito)
 
ソース:http://megabrasil.jp/20171101_37603/
 
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