一方、欧州委は同様のケースでアイルランドに命じていた米アップルに対する追徴課税が実行されていないとして、同国をEU司法裁判所に提訴する方針を明らかにした。20カ国・地域(G20)や経済協力開発機構(OECD)で国際課税の新たなルール作りが進むなか、多国籍企業による税逃れを容認しない姿勢を改めて示した。
欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年に本格調査を開始した。同委は15年10月、米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する優遇措置が違法な国家補助にあたると認定。同措置を適用していたオランダとルクセンブルクに対し、最大3,000万ユーロの追徴課税を命じた。さらに昨年8月にはアイルランド政府がアップルに適用していた税優遇措置を違法な国家補助と認定し、最大130億ユーロの追徴税を課すよう命じている。
欧州委が新たに違法と判断したのは、ルクセンブルクが06年から14年にかけてアマゾンに適用していた税優遇措置。同国に拠点を置くアマゾンの子会社は税務当局との取り決めに基づいて、ウェブサイトやソフトウェアなどの利用許諾の名目で同国内の持ち株会社に使用料を払い、課税対象となる利益を減らして税負担を軽減していた。欧州委によると、アマゾンは同措置により、EU域内で得た利益の約75%について課税を免れていた。
これに対し、アマゾンは4日発表した声明で「当社はルクセンブルクの税法と国際課税ルールに従って納税しており、特別な優遇はいっさい受けていない」と反論。決定の無効化を求めてEU司法裁への提訴を検討する方針を表明した。
一方、欧州委はアップルへの追徴課税について、加盟国は通常、同委の決定から4カ月以内に命令を実行しなければならず、アップルのケースでは今年1月3日が期限だったと指摘。アイルランド政府は1年以上たっても追徴課税を行っていないため、EU法上の義務不履行でEU司法裁に提訴すると説明している。
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