環境・健康問題で大きな進歩が期待できるほか、欧州の産業競争力の維持・強化にもつながると判断しているためで、年内にも新政策の枠組み法案を発表する。ドイツの政府・自動車業界はディーゼル車を長期的に必要不可欠な移動手段とみなしていることから反発が予想される。
欧州委は現在作成中の今後の自動車政策に関する枠組み法案に、環境対応車の最低販売比率をメーカーに義務づける内容を盛り込むもようだ。マレシュ・シェフチョビチ副委員長(エネルギー同盟担当)は18日付『南ドイツ新聞(SZ)』のインタビュー記事でこれについて、製造業ではそうした規制への反発があるが、エネルギー事業者や市民に時代の転換を意識させるためには「シグナルが必要だ」と指摘。環境対応車の販売比率義務化に前向きな姿勢を示した。
窒素酸化物(NOx)の排出量が多く走行制限が現実味を帯びているディーゼル車に関しては、二酸化炭素(CO2)排出削減の観点から欧州では重視されているものの、世界のその他の地域ではそうした受け止め方が弱まっていると指摘。また、ディーゼル車に対する欧州市民の購入意欲低下や大都市の大気汚染問題を背景にオランダ、フランス政府などが将来の販売禁止方針を打ち出していることから、欧州全域で禁止される可能性もあるとの認識を示した。
欧州委のユルキ・カタイネン副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)とエルジビエタ・ビェンコフスカ委員(域内市場・産業・起業・中小企業担当)はこれに呼応する形で18日ブリュッセルで記者会見を開催。ビェンコフスカ委員はエンジン車から環境対応車への移行は数年前に予想していたよりもはるかに早く進むと述べ、10~15年後には欧州市民の大半が電気駆動車を運転するようになっているとの見方を示した。カタイネン副委員長は、少なくとも社用車では今後5年で電気駆動車が普及すると明言した。
ビェンコフスカ委員は、自動車業界はディーゼル車排ガス不正問題の発覚から2年が経過したにもかかわらず、「いまだに時代遅れとなったエンジンの改良に固執している」と批判していることから、欧州委はエンジン車規制を大幅に強化する方向とみられる。
「車載電池分野のエアバス設立を」
EVなどでは電池が大きなカギを握る部品となっている。電気駆動車の価値の30~40%を占めるうえ、航続距離も左右するためだ。それにも関わらず欧州勢は電池セルの供給をアジア企業に全面依存していることから、欧州委は欧州自動車産業の競争力が将来的に低下することを懸念。シェフチョビチ副委員長はSZ紙のインタビューで、航空宇宙大手のエアバスを手本に車載電池分野で欧州企業がコンソーシアムを設立することを強く促した。
エアバスは米国航空機大手の旅客機市場独占に危機感を持った仏アエロスパシアルと独DASAが1970年に共同出資で設立した企業で、71年に西CASA、79年に英ブリティッシュ・エアロスペース(BAe)も資本参加した。現在は米ボーイングと世界トップを争うに企業となっている。
シェフチョビチ副委員長はこれを念頭に、EV分野でもエアバスに相当する企業が必要だと指摘。その実現に向けてブリュッセルで政財界のトップが話し合うサミットの開催を計画していることを明らかにした。
ドイツでは自動車大手のダイムラーがセルを生産していたものの、採算が合わず2016年から外部調達へと切り替えた。現在は量産メーカーがない。ただ、サプライヤー大手ボッシュは生産を検討しており、フォルクマル・デナー社長は7月、◇電池化学分野で同社がアジアの競合を出し抜く発明に成功する◇新しいタイプの電池を既存工場で製造できる――の2条件を満たすことができれば生産に乗り出す意向を示した。遅くとも来年初頭までに決定を下すとしていることから、実現の可能性は低くないもようだ。
ソース:http://fbc.de/sc/sc40325/