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米ハリケーンにもロシアが関与?

 
人為的な大災害の話題は、都市で洪水が起こったり、強風が吹いたりするたびに持ち上がる。一部の陰謀理論家によれば、2005年8月にルイジアナ州を襲ったハリケーン「カトリーナ」はロシアのせい、イランの30年の干ばつはアメリカのせい、ハリケーン「サンディ」はバラク・オバマ大統領(当時)のせい。2017年のロシアの冷夏はどうやら、ドナルド・トランプ大統領のせいみたいだ。
 
ソ連やロシアに気象兵器が存在するという信頼できるデータがでてきたことはない。だがプロジェクトはあった。
 
大気圏の上層部、電離層を研究する初期の施設の一つは、1950年代に現ウクライナのハリコフ(ハルキウ)市郊外のズミヨフ(ズミイフ)市に建設された。アメリカ・アラスカ州には、これに類似した施設HAARP(高周波活性オーロラ調査プログラム)がある。世界中で地震や他の大災害が起こるたびに、この施設を原因とする説が浮上する。
 
ズミヨフ局を率いていたのはソ連の電波物理学者セミョン・ブラウデ。試験は1954年の日食の際に始まった。直径25メートルの巨大なパラボラ・アンテナは、堂々たるもので、恐ろしくさえ見えた。地元住民は、ここから放射される波が健康に致命的な影響をおよぼすと考えた。ソ連が崩壊したことで、他の多くのプロジェクトと同様、この高価なプロジェクトの予算も大幅に削減され、まもなく廃止さた。
  
1975年にノーベル平和賞を受賞したソ連のアカデミー会員で理論物理学者のアンドレイ・サハロフが、その回顧録に「話し合い」だけで終わった、と書いているプロジェクトがある。サハロフの考案した「大きな作品」すなわち「津波爆弾」というプロジェクトで、実際にあったようである。熱核爆弾を充填した魚雷を「敵の港」から数百メートル離れた場所で発射すれば、津波が発生し、アメリカの沿岸地域を浸水できるというアイデアだった。「もちろん、アイデアの根底には、相互威嚇しながら世界のバランスを保つ作業に対する、唯一かつ決定的な重要性の認識があった」と、自身のプロジェクトへの非公式な参加について説明している。「誰かがこのアイデアを実現させてしまうのではないかという懸念」はなかったという。「あまりにも現実離れしている」、高額すぎる、おまけに「総じておもしろみがない」ため。
 
冷戦時代、ソ連はキューバおよびベトナムと協力し、台風の進路と威力に影響を与えられるかを研究した。気象実験用に改造された航空機Il-18とAn-12、膨大な量の試薬を使った。台風のさまざまな部分に物質を散布して、圧力や温度を変化させたり、ぐるぐるまわしたり、止めたりすることのできるものだった。問題は、多くの要因と変化を毎秒考慮に入れなければいけないことであった。
 
1970年代末には、別の大型電離層研究プロジェクトが始まった。ニジニ・ノヴゴロド近郊の無線複合体「スラ」で、磁気嵐の影響の研究が行われた。潜水艦から、亜極地まで1.5メガワット級のプラズマ源ミサイルを打ち上げる計画が立てられた(打ち上げは行われなかった)。「余った」プラズマは、大気中で流れを制御する人工遮蔽物のようなものを形成する、敵のレーダーの障壁である。
  
「スラ」は今もあるが、このプロジェクトや他のプロジェクトは極めて高額であるため、年間せいぜい100日活動する程度。1日集中的な作業を行うだけで、1ヶ月分の予算を使い果たしてしまう。
 
ロシアは他の多くの国と同様、天気に影響を与える方法を知っているが、あくまでも局地的である。昨年の戦勝記念日(5月9日)、ロシアの日(6月12日)、モスクワの日(9月10日)には、雲散らしに当局は3億ルーブル(約5億8000万円)使っている。
 
「1990年代半ばに1回だけ、ロシアの専門家が中東のある国と、雨を降らせる技術を提供する契約を結んだ。これは雲を散らせる技術と同じ」と、モスクワ国立大学地理学部気象・気候学講座のパーヴェル・コンスタンチノフ上級講師は話す。この国では雨が降ったが、近隣諸国は干ばつであった。「これらすべてが国際的なスキャンダルに発展し、我が国に対するものも含めて、訴訟が山ほどあった」とコンスタンチノフ上級講師。
 
ロシア科学アカデミー物理学・大気研究所の職員は、気象兵器の効果に懐疑的である。「地球の一部の天気だけを変えることは、地球全体の大気の状態を同時に変えない限り、不可能」とアレクセイ・エリセエフ上級研究員は話した。 したがって、気象兵器の概念は、少なくとも「すべての人々に影響を与える」観点からすると、大したことはなさそうだ。
 
ソース:ロシアNOW/https://jp.rbth.com/science/79162-hurricane