国連によると、ロヒンギャ難民は30万人に達し、多くは女性や子供、高齢者。船で海上を移動するものもいるが、沈没し、相次いで水死しているという。ロヒンギャの住民被害が拡大していることを受けて、双方は10日、1カ月の停戦を宣言した。
国連人権高等弁務官は11日、国連の現地調査は行われていないが、ロヒンギャ問題について「民族浄化」が疑われるとして懸念を表明した。国連は、かねてからロヒンギャについて「世界でもっとも虐げられた民族」と例えている。
◆ アウンサンスーチー氏 偽情報に懸念
事実上のミャンマー指導者アウンサンスーチー国家顧問兼外相は6日、ロヒンギャ問題について声明を発表。「国内に住む人々全員が社会的、人道的に保護されるように対応している」と主張した。また、治安部隊がロヒンギャを迫害しているとの情報は「大量にあるニセ情報の巨大氷山の一角」と否定し、「テロリストの利益」を助長しているとした。
報道制限しているミャンマー政府は、6日と7日に、衝突が発生しているラカイン州での海外メディアの取材を許可。当局の発表では、同州のある村はロヒンギャ側の武装集団「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」の襲撃に遭い、学校や住宅などが放火され、400人以上が死亡したという。ARSAのリーダーは、パキスタンで軍事訓練を受けているとの報道もある。
政府は対テロ法に基づいてARSAを「テロ組織」に指定し、治安部隊の増派を決めた。民主化の象徴でもあるスーチー氏は武装しない市民は保護したいとの意向を示している。
◆ ロヒンギャをめぐる背景
ビルマ近代史専門の上智大学・根本敬教授は、NPO難民支援協会のインタビューで、多民族国家であるミャンマーで、ロヒンギャが深刻な人権侵害に置かれている理由は2つあると指摘。1つは、19世紀の英国植民地前にいた同国の土着の民族ではないとして、国民として認められていないこと。また、ムスリムであり、顔の彫りが深く、肌が黒いことで信仰と外見上の差別があるとした。
根本氏の解説によると、迫害を恐れ、ロヒンギャの貧困層は70年代から毎年、数千から数万人の脱出と難民流出が起きている。人身売買業者のあっせんで海上輸送され、周辺諸国へ売却されていた。しかし、インドやタイなどの政府はこの取り締まりを強化し、受け入れ先のないロヒンギャは海上に放置され、飢餓にいたるという深刻な状態に陥った。資産のある一部の者は、日本、米国、カナダ、北欧などに移り住んでいるという。群馬県館林市は在日ロヒンギャが多いことで知られている。
これまで野党側の指導者だったスーチー氏は政府側の立場となった今、慎重姿勢を示している。長年ロヒンギャ族を取材するカメラマンの狩新那生助氏によると、「スーチー氏がロヒンギャを救済をすれば、国内での反発が大きくなる」と日本メディアの取材に答えた。国際社会には「虐げられた少数民族」と映っているが、ミャンマー国内では「不法移民であり、治安を乱している」と認識されている。
根本氏によると、ロヒンギャによる国籍法の改正や、いまだに軍部の政治介入があるミャンマー憲法を改正することが課題となると分析する。
(編集・甲斐天海)
ソース:http://www.epochtimes.jp/2017/09/28358.html