ベトナムの製造能力に詳しい専門家らは、ラスベガスで開催されたSourcing at Magicという貿易見本市で講演し、ベトナムは米国がTPPから離脱したことに影響を受け、その勢いが削がれたことは認めたものの、同国は依然として世界のアパレル・繊維生産において主要な役割を担っていると主張した。
デラウェア大学でファッションとアパレルに関する研究を行っているSheng Lu助教授は、米国ファッション産業協会との共同調査結果を発表し、ベトナムが中国に次ぐ第2位の調達先であり、調査に回答した企業の88%がベトナムで生産を行っていることを明らかにした。
Lu助教授は、今時点で最も主流となっている調達戦略は「中国+ベトナム+その他多数」であり、グローバル製造拠点が多様化していることが示されたと述べた。ベトナムは最も競争力のあるサプライヤーであり、価格と市場に対する供給能力においてもバランスのとれた国であると評価されている。
「今後2年間は、ベトナムは市場における新星として存在感を増すと見ています。」とLu助教授は調査結果について述べた。「ですが、ベトナムからの調達を増やすとした回答者の割合は、2014〜2015年の前回調査と比較して減少しています。これは、米国のTPPからの離脱と、ベトナムにおける人件費高騰の2つの要因が関係しています。」
WRAP社のAvedis Seferian社長兼CEOは、ベトナムはWRAPによるコンプライアンス遵守状況の認証を申請する工場の数でも第2位であると述べた。
「ベトナムに対する投資の多くは、ベトナムがTPPによって競争力をさらに増すであろうとの考え方に基づくものであったかもしれませんが、実際にはそもそも競争力を持っていたために、最初の投資先として選ばれたということです。」とSeferian氏は述べた。「私は、TPPが発効しなかったからと言って、ベトナムが第2位から転落することがあるとは見ていません。」
Seferian氏は、ベトナムが非常に高い競争力を維持している理由の1つとして、国や業界がコンプライアンスについて真剣に受け止めており、リスクを回避したい企業がその実現に真摯に取り組んでいるということを挙げた。またSeferian氏は、ベトナムの社会では法律やコンプライアンスの法的枠組みを整備し、発展させているということを強調した。
さらにベトナムは、インフラ整備の必要性、港湾、道路、電力への投資の必要性を理解している、とSeferian氏は指摘した。
「これらに対する投資はすべて、ベトナムを非常に優位な立場に導き、(世界から見て)素晴らしい調達先とするのに役立ち、私は相当な期間ベトナムに競争力をもたらすと考えています。」と彼は続けた。
Lanier Clothing社のグローバル調達担当副社長であるSteve DiBlasi氏は、ベトナム政府は繊維・アパレル業界に「莫大な投資」を行っており、このことが業界をグローバル市場における優位なポジションに押し上げたと指摘した。
「TPPの後退にもかかわらず、ポリエステルのような合成繊維の生産は、ベトナムの方が中国よりも安価です。」とDiBlasi氏は例示した。
彼は、ベトナムの産業界は社会的およびビジネスレベルでのコンプライアンス遵守の重要性を認識しており、「彼らは労働者をきちんと処遇しています。たとえ労働コストが増加しても、技術投資による生産効率の向上によって、こうしたコストは相殺されるでしょう。」と述べた。
DiBlasi氏は、「ベトナムは繊維・アパレル産業への強いコミットを行っており、ベトナムへの輸出入は非常に簡単なものとなっています。」と述べ、主要都市にあるいくつかの主要港を例示した。
一方で、特にエレクトロニクス部門における競争力、人件費の高騰、ベトナムがEUとの自由貿易協定を締結しため、欧州企業との競争激化など、「慎重に検討すべき事象」もある。
ソース:http://apparelresource.asia/news/item_2993.html
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