「ディーゼル車の走行禁止を」、ドイツ行政裁が衝撃判決
独シュツットガルト市で、人体に有害な二酸化窒素(NO2)の濃度が欧州連合(EU)基準を上回っているのは問題だとして、環境保護団体ドイチェ・ウンベルトヒルフェ(DUH)がディーゼル車の市内走行の全面禁止を早期に実施するよう求め、地元バーデン・ヴュルテンベルク(BW)州を訴えている係争で、シュツットガルト行政裁判所は7月28日、原告の訴えを認める判決を下した。
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同州など自動車産業を抱える国内5州の政府と連邦政府(国)および自動車業界はディーゼル車のソフトウエアを交換することで走行制限・禁止を回避する方向で調整を進めているが、そうした措置については効果が不十分だとの判断を示した。
裁判は最終的に最高裁の連邦行政裁判所へと持ち込まれる見通し。連邦行政裁がシュツットガルト行政裁と同様の判決を下すと、ディーゼル車の走行はNO2濃度基準を満たしていない国内の60以上の都市で禁止される恐れがあり、低迷しているディーゼル車の需要は一段と落ち込みそうだ。
EUではNO2の許容上限値が1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)に設定されている。シュツットガルトでは同規制が始まった2010年以降、一度も順守できない状況が続いていることから、DUHはBW州政府を提訴した。他の違反都市でも同様の裁判を起こしている。
BW州は今回の裁判で(1)ディーゼル車のソフト交換(2)市内走行速度の制限(3)プレートナンバーに基づく走行規制(4)市内走行料金や近距離走行料金の導入(5)欧州排ガス規制「ユーロ5」以下のディーゼル車と「ユーロ2」以下のガソリン車の市内走行を2020年1月1日以降に全面禁止する――といった、NO2濃度の低減に向けた案を提示した。
だが、シュツットガルト行政裁は今回の判決で、(1)~(4)については濃度低減効果が不十分だとして却下。(5)については効果を期待できるとしながらも施行予定日が遅すぎるとして来年1月1日付の実施が望ましいと言い渡した。
判決理由で裁判官は、有害物質にさらされる地域住民の生命と健康を守ることは、走行禁止で所有権と行動の自由が制限される自動車の持ち主の権利よりも重要だとの判断を示した。
走行禁止支持は57%に
DUHはNO2濃度規制に違反する他の都市でもディーゼル車の走行が早急に禁止されるようにするために、控訴審を経ずに最高裁の連邦行政裁に飛越上告したい意向だ。飛越上告には原告と被告の合意が必要なため、実現するかどうかはBW州政府の意向にかかっているが、同州政府は判決文を詳細に検討したうえで決定するとして、態度を保留している。
同州政府は2月、ユーロ5以下のディーゼル車を対象に来年からシュツットガルトでの走行を制限する方針を示した。だが、同市には自動車大手のダイムラー、ポルシェ、サプライヤー大手ボッシュの本社があり、自動車産業は地域経済の支柱であることから方針を転換。現在はNO2濃度の低減をユーロ5ディーゼル車のソフト交換だけで実現する考えを示している。
連邦政府と自動車産業が盛んな州の政府、および自動車業界などの代表は今月2日に「ナショナル・フォーラム・ディーゼル」という会合を開き、ディーゼル排ガス問題の対策を協議する。ユーロ5ディーゼル車のソフト交換は対策案の柱となっているものの、専門家の間からは効果が不十分だとの批判が出ている。
連邦環境庁(UBA)の調査によると、ユーロ5対応ディーゼル車が排出するNO2など窒素酸化物(NOx)の量は走行1キロメートル当たり平均906ミリグラムで、現行基準「ユーロ6」の許容上限値80ミリグラムを大幅に上回っている。ユーロ5ディーゼル車のソフトを入れ替えても排出削減幅はせいぜい50%程度にとどまることから、リコール後も大量のNOxを排出することになる。
一方、排ガス浄化装置である尿素SCRシステム(ハード)を新たに取り付けると、NOxの排出量を約90%削減できる。それにもかかわらず、メーカーが尿素SCRシステムの追加取付を見送るのは◇コストが1台当たり最低1,500ユーロと高い◇技術的に難しく、仮に取り付けたとしてもエンジン寿命が短くなり、メーカーに補償責任が生じる懸念がある――ためだ。
だが、2日の会合でハードレベルの対応が見送られると、政府と自動車業界の“なれ合い”を批判する声が強まるのは確実で、与党は9月の連邦議会(下院)選挙で痛手を被る可能性がある。
環境保護団体グリーンピースの委託で調査機関エムニドが実施した市民アンケート調査では、「有害物質の排出量が多いディーゼル車の都市部での走行禁止」に賛成との回答が57%に達し、反対の39%を大きく上回った。「メーカーはディーゼル車を修理して排ガス規制値を台上試験だけでなく実際の路上走行でも遵守できるようにすべきだ」は87%に達しており、ソフトの交換では不十分との見方が圧倒的に多いことがうかがわれる。
ソース:http://fbc.de/sc/sc40128/
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