同時期のアジア・太平洋地域では感染例が13%の減少が見られ、HIVに対するフィリピン政府の取り組みと意識啓蒙の遅れていることが露呈した。
報告によると、フィリピンの感染例は男性と男性による性交渉(MSM)が10例中8例を占める高率で、しかも年齢の低い内にMSMを経験することが多い。
このMSMグループは平均して16歳くらいから性体験を持ち、フィリピン・カトリック教会の頑迷性から性教育の埒外となり、感染リスクは非常に高いとなっている。
同様に異性間性交渉による例も増えていて、買春に訪れる外国人に対して感染リスクは相変わらず高いと警告を発している。
HIV感染者がフィリピンで激増している背景には、インターネットや携帯電話の普及によって、青年層が簡単に性交渉の相手を見つけ、それが複数にまたがるためという指摘もなされている。
また、報告ではフィリピン人がHIVについての感染や予防に関する知識を持っているのは全体の35%と低い結果となっている。
こういった問題について、識者はドゥテルテ政権が第1に重心を置いている違法薬物関与容疑者の殺害政策と並んで、HIV撲滅政策を取るべきと指摘している。
アジアで最悪のHIV感染者増加を示したフィリピンだが、世界的には撲滅運動が成功していて、2016年のHIVによる死者数は100万人に上ったものの、ピークであった2005年の半分であることが分かった。
また、新規感染者も過去に一番多かった1997年の350万人から、2016年は180万人と半分に近い数字となっている。
HIVの感染者数については1980年代に拡大を始め、これまでに世界では7610万人が感染し、350万人が死に至っている。
この間、HIVに対する治療や薬剤開発が進み、HIVの増殖を抑える抗レトロウィルス療法では2016年の感染者3670万人の内、1950万人がこの療法を受けていて、延命の効果は出ている。
こういったHIVの療法に対してWHO(世界保健機構)は、薬剤による療法も万能ではなく、薬剤耐性のあるウィルスが出現し、この耐性ウィルスは他への感染力は強く警戒が必要と注意を促している。
これは要注意地域であるアフリカ、アジア、中南米の11ヶ国を調べたところ、6ヶ国で薬剤の効かない感染者が10%以上も確認されている。
このため、他の治療薬への切り替えが必要とされるが、より高価で入手困難な薬剤となり財政負担の懸念も挙げられている。
この他、エイズワクチンの開発も進んでいるが、この35年間で臨床有効性試験が行われたのは4種類しかなく、HIVの制圧には遠いのが現状である。
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