EUによると、域内の銀行が抱える不良債権は約1兆ユーロ。域内総生産(GDP)の6.7%、銀行の融資総額の5.1%に相当する水準だ。
EUは不良債権が減ってはいるものの、処理のペースが鈍すぎ、金融システムの安定や景気に悪影響を及ぼすとして、迅速に処理を進めると同時に不良債権の増大を防ぐための行動計画を打ち出した。
同計画では不良債権処理策の柱として、各国が資産管理会社(AMC)と呼ばれる不良債権の買い取り会社を設立する。2008~12年の世界金融危機に際して、スペインとアイルランドが同様の機関を設立し、不良債権処理を進めたことが参考事例となる。当初はEUレベルで不良債権の受け皿機関「バッドバンク」を創設する構想が浮上していたが、ドイツなど銀行の不良債権が健全な水準にある国が、他の国の不良債権処理に自国の公的資金を投入することに難色を示したため、各国レベルで実施することになった。欧州委員会が今年末までに関連ルールをまとめる。
また、セカンダリー・マーケット(流通市場)での不良債権売却を拡充することも盛り込んだ。現在は同市場が不良債権処理で十分に活用されていないことを問題視したもので、欧州委が18年夏までに具体策を提案する。
行動計画では不良債権の増大を防ぐため、銀行の資本増強に関する欧州中央銀行(ECB)の権限を強化する。各銀行の不良債権増加に備えた資金の手当てが不十分とECBが判断すれば、資本の上積みを迫る。新規融資に際して、必要な資本増強を自動的に行うことを義務付ける仕組みも設ける。これらは欧州委がEUの銀行監督に関するルールを改正する形で実施する。
このほか、欧州銀行監督機構(EBA)が18年末までに、域内銀行の資産、不良債権に関する情報開示を強化することを決めた。
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